横綱白鵬(31=宮城野)が、思わぬ所で例え話の“主役”になった。参院選の公示日だった22日、民進党の野田佳彦前首相が、千葉駅前での街頭演説で安倍首相の政治手法を白鵬に例えたのだ。

 「白鵬は力が衰えた分、立ち合いが汚い。左手を相手の顔に出し、ひるんだところに右肘でかち上げ、エルボーを入れる。豪栄道は眼窩(がんか)底骨折。安倍政権も同じ。左手でアベノミクスと言い、右手で憲法改正。顔面骨折は、国民がするんです」「王道から外れた邪道、外道の政治」……。

 その話を耳にして、正直、無理がある例え話だと感じた。安倍首相は政界の「横綱」かもしれないが、優勝37回を誇る白鵬ほどの「大横綱」ではないだろう。しかも、アベノミクスは我々庶民への恩恵が皆無に等しく限界の感もあるが、白鵬に衰えや限界は感じない。安倍政権への不満を抱いている人は少なくないはずなのだから、もう少しマシな例えがあったんじゃないか? と、首をかしげてしまった。

 同時に、無理がある例え話にしても、政権批判に引用されてしまうほど、白鵬の相撲内容が悪印象を与えていることも実感した。「汚い」と批判された立ち合いに加え、度重なる駄目押しも、悪いイメージを増幅しているのだろう。

 参院選が行われる7月10日に初日を迎える名古屋場所では、稀勢の里の綱とりが注目点だが、その最大の壁となる白鵬には、ぜひとも野田前首相をうならせるような堂々たる相撲を取ってほしい。夏場所の稀勢の里戦のような「どうだ。これが横綱だ」と言わんばかりの相撲を15日間続ければ、野田前首相も「すみませんでした」と頭を下げざるを得ないのではないか。ファンもきっと大横綱の白鵬には、そんな相撲を望んでいるはずだ。【木村有三】