白鵬の1000勝達成の陰でもう1つ、歴史的な取組が生まれていた。「勢」対「輝」。優勝制度が確立された1909年(明42)夏場所以降、1文字しこ名の関取同士が対戦するのは、初めてのことだった。

 1909年以降、1文字関取はこの2人に加えて「鳳(おおとり)」「明(あきらか)」「隼」「轟(とどろき)」「曙」「嵐」「魁(さきがけ)」だけ。9人しかいない。以前に幕内で1文字力士が2人在位したのは、1918年(大7)5月場所の横綱「鳳」と「明」だけで、対戦はなかった。幕内での対戦は歴史をひもとけば、江戸時代の1833年(天保4)の冬に行われた「璞(あらたま)」と「錦」まで、183年もさかのぼる。

 関脇経験者の勢が連続で在位する幕内に、力をつけた輝が上り詰めて、ようやく実現した歴史的な一番。輝は「自分としては、1文字のしこ名はいいなと思っています。前の本名(達)も1文字だったので」と話していたが、幕内の1文字の先輩には及ばなかった。勢は「輝よりも“勢い”があったということで」。先輩の貫禄を示した。【今村健人】