今年の初場所は、雪の被害こそなかったが、寒波に見舞われ寒い日が多かった。寒さ対策は人それぞれ。千代の国は「夏でも着けてるんですが、おなかが冷えると下痢になるので」と、取組が終わって風呂から上がると支度部屋では、まず腹巻きを着けていた。

 そんな中、厳しい寒さにも「大丈夫です」と力強く答えていたのが、逸ノ城だ。祖国モンゴルの冬は「マイナス15度とか、それが普通でした」と言うだけに、寒さには慣れたものだ。しかも、逸ノ城は元遊牧民。凍える寒さの中でも、ゲルの中より外にいる時間が長かったと言うだけに、寒さに対する“免疫”は相当なものだ。

 「冬でも仕事をするんですよ。動物の世話です。犬とか動物のうんちとか拾ったりしてました。牛のうんちは乾かして、ストーブに入れる。燃料にするんですよ。仕事をやってる時は、寒くても汗びっしょり。逆に暑かったです」。

 逸ノ城の家族が飼っていた家畜は、牛が約50頭、羊は約400頭。冬場でも放牧し、逃げないように外で監視していたという。川まで水をくみに行くのも、逸ノ城の仕事だった。

 腰を痛めて昨年秋場所は初めて全休し、同九州場所でも精彩を欠いたが、寒さの中の初場所では11勝を挙げて、優勝争いを盛り上げた。西前頭13枚目から、春場所は前頭中位まで浮上するのは確実。荒れる春の主役候補に、名乗りをあげそうだ。【木村有三】