東十両13枚目の希善龍(33=木瀬)が、屈辱的な記録樹立が濃厚な状況にも、前を見続けている。今場所は元十両の須磨ノ富士の8度を抜き、史上最多9度目の十両昇進で迎えた。過去8度の十両では1度も勝ち越しがなく、初の勝ち越しを目指して臨んだが、10日目に早々と負け越し。12日目には9敗目を喫し、来場所は史上単独1位となる9度目の幕下陥落が濃厚だ。だが「(39歳の)安美錦関を見ていて、まだまだやれるという気持ちはあるし、幕内という目標は持ち続ける」と、力強く話した。

 十両と幕下の間には、待遇に大きな違いがある。十両以上には給料が発生し、部屋では個室が与えられ、付け人が同行。一人前として扱われる。稽古でも、幕下以下は黒まわし、十両以上は白まわしを着ける。希善龍は「(十両以上が本場所や巡業で着ける)締め込みや、白まわしの方がパリッと気持ちも引き締まる」と、誇りを持っていた。

 だからといって、陥落を屈辱とは思っていない。「大部屋だろうが個室だろうが気にしない。今場所は9敗してから変な硬さがなくなって連勝。そう考えると、まだ成長の余地がある。9回落ちることより、それでも諦めない気力が持ち味だと考えたい」と笑顔。10度目の十両昇進は遠くはなさそうだ。【高田文太】