WBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥(23=大橋)が、こめかみ狙いの左フックでベルトを守る。8日の同級1位カルモナとの2度目の防衛戦(有明コロシアム)に向け5日、都内で行われた予備検診に臨んだ。前回の試合から胸囲が3・7センチ大きくなるなど、さらにパワーアップした肉体を披露。完勝での防衛を予告した。

 井上は診察を受けるカルモナの様子をじっと見つめると、「すごく調子が良さそう。試合が楽しみ」とうなずいた。自身も、昨年末のV1戦から胸囲が3・7センチと大幅アップ。「サンドバッグを強く打つなど、練習から意識してきた成果。さらにパワーアップしていると思う」と力を込めた。

 検診後の会見では「結果的にKOになれば」と控えめに話したが、倒す準備は出来ている。得意の右に加え、今回の試合に向け、左フックを重点的に磨いてきた。走り込みで下半身を強化してきたことも影響し、「上と下がフィットして、力が逃げない感覚をつかんだ。かなり手応えがある」と自信を深めた。

 「フックと同じ動き」と話す腕相撲では、利き腕の右より、左の方が強い。その持ち前のパワーをさらに生かすのが、相手の「こめかみ」を的確に捉える技術だ。「人さし指と中指の付け根を相手のテンプルにねじ込むイメージ」と話す。試合に向けたスパーリングでは、被弾したパートナーが軽い脳振とうを起こし、足をもつれさせながら倒れるシーンを何度も作った。

 迎え撃つカルモナはガードを高く保つ技巧派とあり、攻略には積極的な仕掛けが求められる。父の真吾トレーナーも“新兵器”には大きな期待をかけており「体重が乗るようになり、ガードの上からでもなぎ倒すような力強さが出てきた。当たれば倒せるイメージもある」と話した。

 体重もリミットまで残り1キロを切るなど、調整は万全。大きな注目が集まる16年初戦に向け、「うまさと強さを世界にアピールしたい」と井上。日本ボクシング界の「怪物」が、さらに進化した姿を見せつける。【奥山将志】