公務員プロボクサーが東日本新人王決勝に出場する。埼玉・新座市役所勤務のフェザー級新座宏(35=フラッシュ赤羽)で、28日の都内での出場選手が顔合わせした会見には、有休を使って出席した。決勝は11月13日に東京・後楽園ホールで行われる。

 公務員は副業が禁止されているが、新座は須田前市長、並木現市長の特例許可で二足のわらじを履く。報酬は得られないため、ファイトマネーは市に寄付している。女子の世界王者池山直は岡山市職員、他にも郵便局員や警察官などの公務員プロボクサーはいる。

 新座は本名渡辺宏も「市の役にも立ちたい」と市名のリングネームに変え、昨年7月再デビューした。空手好きの家系も「同じものはやりたくなかった」とバスケットや体操をやった。芝浦工大でボクシングを始め、アマでは3勝(3KO)1敗だった。

 大学院時代の05年にプロデビューで2回KO勝ちも、機械メーカーに就職するとライセンスを返上した。大学コーチなどはしていたが「もう1度リングに」の思いがあった。09年に公務員へ転職して須田前市長に直訴も「仕事に慣れていないから」と却下された。14年に人事異動で面談した際に「まだ続けているならやってみろ」と許可が出た。15年にプロテストを再受験で合格した。

 仕事は夜8時ごろまであり、ジムへ行くのは週4回程度という。試合前も通常勤務で計量や試合日は有休で調整と特別待遇はない。現在は市民安全課で防災関連が仕事で防御は得意のはず? も「結構パンチをもらっちゃう」と笑う。トランクスの前には市のゆるキャラのキリンゾウを貼る。尻には新座市のワッペンに「ダウンは絶対にできない」。

 対戦する木村吉光(白井・具志堅)は20歳のホープだ。ボクシング経験はないが世界王者を目指して香川・善通寺から上京。昨年5月のプロデビューから5戦全勝(4KO)している。新座は4勝(2KO)1敗。「強い相手でどこまで行けるか。行けるとこまでいくだけ。37歳の定年までは続けたい」という。試合には新旧市長ら約50人が応援に駆けつける。新人王となれば、願ってもない新座市アピールになる。