【矢野通スペシャルインタビュー3】

 11月12日の新日本の大阪大会で棚橋弘至(34)のIWGPヘビー級王座に初挑戦する矢野通(33)。田子作タイツに、金髪、酒しぶきを上げながらの入場。オリジナルの技は、鬼殺し、八海山、鏡割、黒霧島、赤霧…酒にちなんだ名前が付けられている。

 ラフファイトに徹しても、プロレスラーとしての知性は抜群だ。東京の京北高時代は、レスリングでインターハイ、高校選抜、国体、ジュニア五輪で4冠。日大レスリング部時代は、グレコ、フリー両部門で全日本学生選手権を制した。広い視野と明晰(めいせき)な頭脳で、ヒール軍団ケイオスを、新日本を、会場を、試合をコントロールする「今が旬」な悪党。

 矢野と言えば「バーバー矢野」。昨年は棚橋のロン毛をしつこく習い続けた。だが昨年6月の大阪大会で負けて丸刈りにされた。今も、試合の最中にハサミを取り出す。「バーバー矢野」は予約不要。試合中に、突然開店する。セコンドについていたヤングライオン高橋広夢(21)は、グチャグチャに刈られて丸刈りを余儀なくされた。ホストばりの美形の尾崎リングアナウンサーも、後ろ髪の半分を切られた。

 執念深く髪の毛を狙う矢野に、棚橋は「あいつの頭を刈ってもしようがない。ようし、俺が勝ったら、矢野を俺と同じ髪形にする」と矢野“ロン毛化計画”を発案した。「バカ言ってんじゃねぇ。大阪で勝って、棚橋の髪の毛を刈り取ってやる。そうだ、それでヅラ(かつら)をつくってやる。次の順番待ちは永田か?

 永田を丸刈りにして、そのヅラをかぶせてやるよ」と笑う矢野。

 予約不要、アフターケアバッチリの「バーバー矢野」店主。「Y」WGPベルトを収めたアタッシェを手に「適当に書いとけよ。メチャクチャで構わねぇよ」と大サービス。でも「『実はいい人』とか、ぶっ殺すぞ ! 」と最後に キッチリ脅された。【小谷野俊哉】◆矢野通(やの・とおる)1978年(昭53)5月18日、東京・荒川区生まれ。7歳でレスリングを始め京北高でインターハイ、全国選抜、国体、ジュニア五輪で4冠。日大レスリング部で全日本学生フリー、グレコ両部制覇。02年1月新日本入門、同5月18日にブルー・ウルフ戦でデビュー。07年真壁刀義とIWGPタッグ王座。得意技は鬼殺し、裏霞、鏡割。186センチ、115キロ。血液型B。