<全日本:愛知大会>◇29日◇愛知県体育館

 諏訪魔(31)が史上最速のデビュー1297日で3冠ヘビー級王座に輝いた。3度目の防衛を目指す佐々木健介(41)を29分55秒、必殺のラストライドでマットに沈め、最後は片エビ固めで3カウントを奪った。06年9月3日に太陽ケアが、パンクラスの鈴木みのるに奪われて以来、604日ぶりに同ベルトを全日本に取り戻した。

 トップロープから諏訪魔が飛んだ。リング上の佐々木の胸に、188センチ、120キロの巨体がのしかかる。王者から3カウントを奪うと、そのままマットに倒れ込んだ。「すげえ強かった佐々木さんから取ったベルト。強いチャンピオンを目指したい」。すべてを出し切った新王者に、観衆は拍手で応えた。

 デビュー史上最速の3冠王者だ。レスリングのアテネ五輪代表候補の肩書を引っ提げ、04年4月「鶴田2世」と鳴り物入りで入団。デビュー直後には、佐々木、ベイダーら強豪といきなり試練7番勝負で鍛えられた。この時は佐々木に7分31秒で完敗。プロレスの厳しさを教えられた。その後、ヒール、ベビーフェイスと転向を繰り返しプロレスの深みを学んだ。そして今月のCC優勝で一気にその能力が開花した。

 実績で大きく上回る大きな壁、佐々木超えを達成し「鶴田2世」がまた1歩、本家に近づいた。今シリーズ前、ジャンボ鶴田さんが現役時のビデオを何度も見直した。「へそで投げるバックドロップを自分にシンクロさせたい」とイメージを膨らませていた。この日は佐々木に4度さく裂させ成果を見せた。同王座は中大の大先輩故ジャンボ鶴田さんが統一して初代王者となった。それだけに「このチャンスをものにしたかった」と勝利をかみしめた。

 試合後、佐々木から「力で守り抜け」と言葉をかけられた。鶴田さんは同ベルトを計3度巻き、通算6度の防衛を果たした。「いつかは超えたいと思っている目標の人」。諏訪魔にとってこのタイトルは「鶴田超え」への序曲にすぎない。【塩谷正人】