<プロボクシング:WBC世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦12回戦>◇15日◇パシフィコ横浜

 長い長い空白が、ようやく埋まった。西岡利晃の王座獲得で名門帝拳ジムに22年ぶりの日本人世界王者が誕生した。かつて大場政夫、浜田剛史と王者を輩出しながら、87年7月に浜田が王座を手放して以来、11度の世界挑戦にすべて敗れた。本田明彦会長(61)は「何回も挑んで、何回もはね返された。だから、本当に今日はうれしい」と話した。

 有力選手をそろえながらも、頂点は遠かった。尾崎富士雄、八尋史朗、葛西裕一、稲田千賢らが、あと1歩で夢に破れた。西岡もその1人。浜田氏は「それでもあきらめない努力は、みんなが知っていた。ジムに世界王者がいないというプレッシャーもあったと思う。でも、これで続く選手にも励みになる」と言った。

 世界王者不在には理由もあった。アマボクサーを真に強い王者に育てるのがジムの目標。性急な世界挑戦はせず、厳しい練習で地力をつける。敏腕プロモーターとして世界を知り尽くす本田会長の考えは、ジムとしての姿勢でもある。「たまたま僕がとれただけ」と西岡は話したが、このジムだからこそ西岡の努力が花開いたのかもしれない。

 昨年7月に「日本育ち」のベネズエラ人、ホルヘ・リナレスがWBC世界フェザー級王座に輝き、帝拳に世界王者が生まれた。現在は日本王者3人、東洋王者2人が所属。王者たちの相乗効果が、名門復活の力になった。「本田会長や長野マネジャー、ジムのみんなに感謝したい。少しは恩返しができました」。西岡は笑顔で言った。【荻島弘一】