<K-1

 WORLD

 MAX

 2008

 FINAL>◇1日◇日本武道館

 「反逆のカリスマ」が、ボロボロになって栄冠をつかみ取った。魔裟斗(29=シルバーウルフ)が決勝でアルトゥール・キシェンコ(21=ウクライナ)を延長判定3-0で下し、5年ぶり2度目の世界王座に輝いた。日本人同士の準決勝となった佐藤嘉洋(27=フルキャスト)戦、決勝とともにダウンを喫する大苦戦。意識はもうろうとし、右目の周りは大きく腫れ上がるなど満身創痍(そうい)だったが、最後は第一人者の意地を見せつけた。

 一体、この男のどこにこんな力が残っていたのか。1-0の判定で延長戦に突入した決勝戦。魔裟斗はフラフラになりながらも目の前の敵に向かって行った。「今日は根性。それ以外の何ものでもなかった」。顔面をどれだけ殴られようとも決してひるまない。そして判定-。「赤」のコールが2度、響き渡った瞬間、両手を高々と突き上げた。5年ぶりに味わう歓喜。「やっと…やっと取ることができました」。人目をはばからず号泣した。

 大苦戦の連続だった。日本人対決となった準決勝3回32秒、佐藤の右フックによもやのダウン。「あれで頭が痛くなった」。続くキシェンコとの決勝も2回13秒に、左カウンターに再びマットに倒れ込んだ。それでも前に出続けた。倒されるかもしれない危機感、第一人者としてのプライド…。すべてをかなぐり捨てた男の姿がそこにはあった。

 今年は是が非でも勝たなければならない理由があった。昨年までの同大会は「8強ワンデーマッチ」だったが、魔裟斗が「1日3試合はキツい。もうトーナメントには出ない」と発言したことで1日2試合にシステムが変更された。また大会直前には「ロングスパッツはダメージの軽減につながるのでは」とライバルのコスチュームもけん制。今大会から禁止となるなど、確実に追い風が吹いた。「みんな、自分のために…」。自分の要求がすべて通っていただけに、負けるわけにはいかなかった。

 今回は「進退をかける」と臨んだだけに「まさか2回も倒されるとは思わなかったよ。内容?

 どうでもいいです。100%やり切った」と笑顔。ヘビー級をはじめ日本人の苦戦が続く中、エースがその存在感を示した。【山田大介】