ボクシングのWBC世界フライ級王者内藤大助(35=宮田)が「オトナの余裕」を見せた。29日の同級3位亀田興毅(23=亀田)との6度目の防衛戦(さいたまスーパーアリーナ)に向けて17日、都内の所属ジムで練習を公開した。2回のスパーリングでは、興毅と同じサウスポー相手に軽快な動きを披露。宮田会長からは、興毅の23歳の誕生日に関係づけたパフォーマンスを促されたが、やんわりと拒否し「オレにはオレの考えがあるよ」と、闘志を内に秘めた。

 6度目の防衛戦を迎えた内藤はオトナだった。公開練習前の記者会見。興毅が23歳の誕生日を迎えたと聞かれると「全然(試合に)関係ないじゃん」と即答。横から宮田会長が真新しいグローブとペンを差し出し「内藤君、サインして、ほら」と言うと、戸惑いつつ「『いるか~!』って言われるでしょ」と、笑顔でパフォーマンスを拒否。約80人の報道陣が詰め掛けたジムを笑いに包んだ。

 その後も「ゴーイングマイウェイ」を貫いた。「ボクシング界を盛り上げようとか言っていたのに何もしない」と、自身を批判する興毅の言葉にもムキにならない。「あいつだって、そんなに盛り上げているわけじゃないじゃん。まあまあまあまあ。オレにはオレの考えがあるよ」。スパーリングの相手が左フック1発でダウンしても、報道陣向けのサービスと解釈したのか「つまんねえ」と、ぼそり。「オレはオレのペースがあるからね」。周囲に流されず、調整に集中した。

 興毅とは年齢で一回り違う。「オレがデビューしたのが22歳か。23歳で2階級狙うのはすごいね」。いじめられっ子の自分から脱却するためにボクシングを始めた内藤は、ボクシング一筋の亀田家をうらやんだこともあったという。「朝早く起きて走って、仕事行って、夕方はジム。それを毎日。家族も養わなくちゃならなかったらね。でもハングリー精神がついたと思う。やりたいことだから努力、苦労もしてきた。よくやって来たなと自分でも思うよ」。日本ボクシング史上最年長防衛記録を更新しつつ35歳まできた。その年齢を不安視する声もあるが、「気にしていない。(興毅より)オレの方が精神的に若い。肉体的にも自信あるからな」と力を込めた。

 決戦への意気込みを聞かれると「今までやってきたことを、この試合もすべてぶつけます」と「も」を強調した。今回の防衛戦は、次男大毅を下した07年10月から続く亀田家との因縁に終止符を打つ大一番と、周囲は過熱気味だ。それでも熟練の王者は、平常心を保ったまま運命の日を迎えようとしている。【浜本卓也】