<プロボクシング:WBC世界スーパーバンタム級タイトルマッチ>◇30日◇東京・日本武道館

 WBC世界スーパーバンタム級王者の西岡利晃(33=帝拳)が、4連続KOで4度目の防衛を飾った。5回、無敗の挑戦者バルウェグ・バンゴヤン(23=フィリピン)が攻勢に出たところに、得意の左ストレートを決めてダウンを奪い、さらに連打を畳み掛けて同回1分14秒、TKO勝ちした。元WBAスーパーフライ級王者渡辺二郎の持つ初防衛戦からの日本人連続KO防衛記録を27年ぶりに更新し、戦績を36勝(23KO)4敗3分けとした。前WBC世界フェザー級王者の粟生隆寛(26=帝拳)は、ワイベル・ガルシア(パナマ)を8回TKOで下し、2階級制覇前哨戦を飾った。

 4度目の防衛を達成すると、西岡は「ひとこといいですか?」とリング上で語り始めた。前夜に長女小姫ちゃん(4歳)が39度5分の高熱でダウンし、会場にいなかった。「ひめちゃん、パパ勝ったよ」。08年からボクシングに集中するため家族と離れ単身生活を送る王者は、テレビの前で応援する愛娘に優しいパパの笑顔を見せ、リングサイドにいた美帆夫人と抱き合って喜びを分かち合った。

 誤算は“長女の不在”だけで、その他は完ぺきだった。4回の公開採点では、ジャッジ3人が大差で支持。「採点を聞いて出てきてくれた」と言うように、5回に攻勢に出てきたバンゴヤンのすきを見逃さなかった。30秒過ぎ、挑戦者の左フックよりも速く左ストレートを顔面へ。「このまま絶対に終わらそう」。立ち上がる相手に冷静にたみかけ、5回1分14秒、レフェリーが試合を止めた。日本人トップとなる初防衛戦から4連続KO防衛を達成。「思い通りの展開だった。良い形で終われましたね」と、きれいな顔で振り返った。

 最高の結末を生み出したのは向上心だった。昨年10月の防衛戦では挑戦者のあごを左フックで粉砕し、強打を見せつけた。それでも「改善点はいくらでもある」と、同12月から新たに体幹強化練習を導入。年末年始も欠かさず続けた。妥協を知らない姿勢は、指導する中村氏を「やめろって言われるまでやる選手。すごい」とうならせた。その効果は試合前から表れていた。1カ月半前、左アッパーでボディーミットをした葛西トレーナーのあばら骨を1本粉砕。この日は強打でバンゴヤンの心を折った。

 5度目の防衛戦は英国人の同級1位モンローとの指名試合が有力。帝拳ジム本田会長は「8月か9月ごろ。入札になるんじゃないかと思いますよ」と語った。この日、日本のエース長谷川がよもやの敗戦を喫し、日本人世界王者は5人となった。だが心配はない。日本には、心技体で最高レベルに近づきつつも「目指すは世界の西岡です」と、さらなる高みを目指す王者がいる。【浜本卓也】