WBA世界スーパーバンタム級12位木村章司(32=花形)が、8年越しの「夫婦の夢」をかなえる。20日にタイで同級王者プーンサワット・クラティンデーンジム(29=タイ)に初挑戦する。決戦を1週間後に控えた13日、横浜市内のジムで最終調整した。03年に「世界を取る」と誓い、奈美夫人(32)とボクシンググローブのタトゥーを一緒に入れて7年。32歳でついに世界戦のリングに立つ挑戦者は、「妻にベルトをみせたい」。16日にタイに出発する。

 8年越しの約束を果たす時が、ようやく訪れた。木村は結婚前、交際中だった奈美夫人と左肩にボクシンググローブのタトゥーを入れた。「一緒になろう、一緒に世界チャンピオンになる」という決意を込めた。奈美夫人は「一緒になるって覚悟と、世界を取るって約束なんです」と懐かしそうに当時を笑顔で振り返った。

 それから7年。03年12月31日に婚姻届を出し、2人の娘を授かった。4年前からはアスク株式会社の正社員として、エアコンなどの取り付けの仕事に精を出してきた。それでも、妻との約束を忘れたことはなかった。早朝のロードワーク、勤務後のジムワークを続けてきた。09年12月に2度目に手にした日本王座を失った。32歳。もう約束は果たせないかと思ったとき、世界戦の話が来た。

 王者は16連勝中の強敵。世界初挑戦が敵地で、リングは屋外の予定。北海道出身で暑さが苦手な木村には不利な条件ばかりだが「リスクを背負わないと勝てない」と覚悟は決めた。1週間前のこの日は横浜市内のジムで最終調整。「敵地だし早めに体重を落としています。順調ですね」と状態の良さを口にした。

 試合当日、奈美夫人は日本で勝利を祈る。「待っているしかない。夢がかなってほしい」と話す妻に、木村は「ずっと支えてきてくれた。いちばんベルトを見たいと思うので見せたい。不利なのは分かってる。でも、信じたい」と誓った。夫婦の約束を果たすべく、木村が一世一代の大勝負に出る。【浜本卓也】