WBA世界スーパーフェザー級王者の内山高志(33=ワタナベ)が「五輪金メダルパンチ」で王座を統一する。今日31日、大田区総合体育館で開催される3大世界戦(日刊スポーツ後援)の調印式と計量が30日、都内で行われた。暫定王者ブライアン・バスケス(25=コスタリカ)との王座統一&V6戦に臨む内山は、得意の左右のボディーブローを磨いてきた。ロンドン五輪男子ミドル級金メダリストの村田諒太(26)も参考にした必殺パンチで、1年を締めくくる。

 王者の風格が漂った。3大世界戦の調印式。内山は終始、穏やかな表情を浮かべ、時には柔和な笑顔をみせた。計量はスーパーフェザー級リミットより0・1キロ下回る58・8キロでパス。昨年に続く、世界暫定王者の強敵相手も「明日は楽しみです。しっかり勝って1年を締めくくりたい」と、どこまでも自然体だった。

 自信の裏付けがある。「五輪金メダルパンチ」。左右のボディーブローだが、ただのボディーとはワケが違う。普通は体を開き、フック気味に打つことが多いが、内山の場合は、手のひらを上向きにして下から直線的に最短距離を打つ。ただ当てるのではなく、やりのように突き刺すショートパンチ。昔から得意にしてきたもので、アマ時代から親交のある村田も研究し、ロンドン五輪金メダルにつなげた。

 暫定王者バスケスは身長で7センチ、リーチで12センチも下回る。足を使い、ヒットアンドアウェーで揺さぶってくる可能性が高い。相手が接近したとき「五輪金メダルパンチ」の出番になる。破壊力ある一発を積み重ねれば、ダメージは蓄積され、足は必然と止まる。あとはラッシュでとどめを刺すだけだ。相手を研究中にイメージがわいたもので、重点的に強化してきた。

 世界戦6連続KOの日本記録のかかった7月の前戦ファレナス戦は、偶然のバッティングで3回負傷引き分けに終わった。8月のロンドン五輪は村田の金メダルをテレビ観戦。自らの武器を参考にしたボディーブローの連打で勝つシーンに力をもらった。今度は、アマで現役続行を決断した後輩に、プロの強さと迫力を見せると決意している。

 この日の調印式で、WBAスーパーバイザーのロバート・マック氏は、アテネ五輪男子フライ級金メダリストのユリオルキス・ガンボア(31=キューバ)が来年1月1日から暫定王者に昇格すると発表した。対戦を熱望する大物が、指名挑戦者になる可能性が高まってきた。「対戦の機運を盛り上げるためにも、いい内容で勝つ」。来年のスーパーファイトを実現させるため、まずは「五輪金メダルパンチ」でバスケスをKOする。【田口潤】