高校生初のアマ7冠を達成した日本ライトフライ級6位・井上尚弥(20=大橋)が、世界戦クラスの会場で日本王座に挑戦することが濃厚となった。16日に同級1位・佐野友樹(31=松田)に10回TKO勝ちした井上は17日、横浜市の大橋ジムでの記者会見に出席し、次戦の日本タイトル挑戦を熱望。大橋秀行会長(48)は王座挑戦が正式決定した場合、パシフィコ横浜など世界戦で使用する会場で開催するプランを明かした。

 「怪物」の自信は揺るぎないものになった。前日16日のプロ3戦目は、日本1位・佐野に右拳を痛めるアクシデントを乗り越えて10回TKO勝ち。井上は「できることはすべてやりました。次戦の希望は、日本タイトルマッチをやりたいなと思います」と、歯切れよい口調で熱望した。

 佐野戦の試合内容などが考慮され、今月中に開催される日本ボクシングコミッションによるランキング委員会で、現在は日本ライトフライ級6位となる井上のランクアップが検討される。所属ジムの大橋会長は「左だけで1位を圧倒した。これで1位になればいいですね」と期待を込めて話した。日本同級王者・田口良一(26=ワタナベ)の初防衛戦が指名試合となるため、井上が1位にランクされれば、日本王座挑戦のチャンスが回ってくる。

 井上の過去3戦はすべて後楽園ホールで開催されてきた。ただし日本王座挑戦となれば、大きな会場にステップアップしそうだ。大橋会長は「パシフィコ横浜、東京ドームシティホールなどが候補になるでしょう」と説明。井上の同門の先輩となる元WBC世界スーパーフライ級王者・川嶋勝重氏、世界2階級制覇王者・八重樫東(30)らが世界戦に臨んだパシフィコ横浜など3500人以上が収容可能な会場に「昇格」させるプランを口にした。

 井上はこの日の会見前、病院で痛めた右拳の精密検査を受けた。骨に異常はなく、打撲と診断された。トレーナーの父真吾氏(41)は「右拳は1カ月ぐらいは安静にさせたい」と、王座挑戦に備えて完治させる方針だ。今日18日にはロードワークを再開する予定の井上は「大きな会場になってもたくさん人が来てくれるとうれしいですね」と、王座挑戦の朗報を楽しみに待っている。【藤中栄二】

 ◆パシフィコ横浜での主な世界戦

 02年1月、WBA世界ミニマム級王座決定戦となる星野敬太郎対ガンボア小泉の開催が最初。同7月には星野敬太郎がWBA世界ミニマム級王者アランブレットに、03年7月には新井田豊が同王者アランブレットに挑戦。06年1月、WBC世界同級王者イーグル京和が中島健の挑戦を受けた。大橋ジム勢では川嶋勝重が07年1月、WBC世界スーパーフライ級王者ミハレスに挑戦。八重樫東が07年6月、WBC世界ミニマム級王者イーグル京和に挑戦している。