ロンドン五輪ボクシング男子ミドル級金メダルの村田諒太(27=三迫)が、プロデビュー戦でいきなり2冠王者と激突する。8月25日、東京・有明コロシアムで東洋太平洋ミドル級&日本スーパーウエルター級の両王者・柴田明雄(31=ワタナベ)と対戦することが3日、発表された。73キロ契約体重6回戦で拳を交える。東洋太平洋、日本の王座を保持する2冠王者とのデビュー戦は史上初。勝てば両王座のランキング入りが濃厚で、プロ2戦目で王座挑戦できる権利を得られそうだ。

 驚きのデビューが決まった。村田が日本スーパーウエルター級、東洋太平洋ミドル級の両王座を保持する柴田と初戦のリングで対峙(たいじ)する。98年5月に石原英康がデビュー戦で当時の日本フライ級王者スズキ・カバトと6回戦で対戦し、勝利を飾ったことがあるが、東洋太平洋王座も保持する2冠王者との初陣は初めてとなる。

 村田

 今、日本に世界王者がたくさんいる。ボクシングの魅力は本物と戦わないと伝わらないし、納得してもらえない。いきなりの王者との対戦。生意気かもしれませんが、挑戦者のつもりで。試合の日を楽しみにしています。

 柴田とは昨年5月17日、ワタナベジムに出げいこした際、3回のスパーリングで「対戦」した。開始20秒で右ストレートがヒットし、ロンドン五輪に向けて弾みをつけた練習だった。その後、村田は五輪金メダリスト、一方の柴田も2冠王者となった。今回はヘッドギアもなく、両拳の衝撃が強く伝わる10オンスのグローブで戦う。村田は「あの時はたまたま良い右が当たってボクのペースになっただけ。それまで、かなりパンチを合わせられていた。参考にならないと思います」とキッパリ。今月14日からは再渡米。試合2週間前となる8月11日までラスベガスでスパーリングを続け、柴田戦に備える。

 2冠王者の柴田に勝てば6回戦とはいえ、東洋太平洋と日本のランキングに入ることが濃厚。既にプロテストでA級ライセンスも取得しており、ランク入りすれば王座挑戦も可能。プロ2戦目で、世界挑戦時の条件となる日本か東洋太平洋の王座奪取も期待できる。また柴田はWBC世界ミドル級20位。「世界」を感じられる絶好の相手になる。

 会見には100人以上のマスコミが集まり、テレビカメラ8台が並んだ。試合当日は、日本ライトフライ級1位の井上尚弥(20=大橋)が、地元の神奈川・スカイアリーナ座間で同級王者・田口良一(26=ワタナベ)に挑戦。この2試合をフジテレビがゴールデンタイムで2元中継するなど、注目度の高さは抜群だ。

 ミドル級で世界最強と言われるWBA王者ゲンナジー・ゴロフキン(31=カザフスタン)の名を挙げた村田は「シャレにならないぐらい強いが、最終的にはそこにたどり着きたい。日本一ではなく、世界一。世界を目指して頑張りたい」。本物路線のど真ん中を突き進む-。村田には、その覚悟がある。【藤中栄二】

 ◆ランキング入り条件

 日本ランキングは日本ボクシングコミッション(JBC)がマスコミ代表者を交えて毎月1回、ランキング委員会を開催し、各階級の順位を決定。1勝以上挙げたA級ボクサーを対象にランキングを決める。毎年行われる全日本新人王を制覇すれば自動的に各階級の10位に入る。試合で日本ランカー、あるいは各国上位ランカーを撃破すればランク入りの対象。世界ランカーや各国王者を撃破すれば世界ランキング入りすることが通例となる。東洋太平洋ランキングも、東洋太平洋連盟がJBCと同じような手順で決めている。