ミスター女子プロレス、神取忍(49=LLPW-X)の生誕50周年記念イベントが、11日に両国国技館で開催される。21歳で柔道から転向し29年、社長兼現役レスラーとして業界のトップを走り続ける。30日に50歳になる神取が、これまで、そして今後を語った。

 生誕50周年のメーンは、ファン投票で神取と天龍の14年ぶりの再戦に決まった。シングル戦で惨敗した前回とは違い6人タッグとなるが、神取は「今回も遠慮なく、今度こそ行くぜという気持ち。あいさつにいったら『中途半端なことはしないぜ』と言われた」とうれしそうに話した。

 86年のプロレスデビュー以来、男勝りの戦いぶりで女子プロの常識を打ち破ってきた。「殴り続けて29年。道のないところに道をつくってきた。いろんな形でむちゃをしたけど、自分を褒めてあげたい」。00年の天龍とのシングル戦は男女の一騎打ちというプロレス界で例を見ないトップレスラー同士の対決として話題を呼んだ。結果は、ボコボコに殴られタオル投入の惨敗も「あれで怖いものがなくなった」と転機となる一戦だった。

 3年前にLLPW-Xの社長に就任。東京・大塚に道場を構え、経営に気を配りながらリングにも上がる。女子プロは過去に人気を博した時代もあったが、現在は低迷期。団体が道場や寮を所有し大会を開催する方式から、イベントに選手を派遣したり、アイドルとの融合を図ったりと、あの手この手の戦略で生き残りを図っている。

 「プロレスの仕事は、人々に夢を与える、やりがいがある仕事。私が育ててもらった業界を元気にしていって次に渡したい」と神取は言う。29年の現役生活で大きなケガもなく、全力で突っ走ってきた勢いは、まだまだ衰える気配がない。だが、神取には引退後のプランもある。「現役半ばで議員(参議院議員)をやったけど、引退したらまた議員をやりたい。もともとやりたかったし、これからというときに落選したんで」と笑う。自分の道は自分で切り開く。ミスター女子プロレスは歩みを止めない。【桝田朗】

 ◆神取忍(かんどり・しのぶ)1964年(昭39)10月30日、神奈川県横浜市生まれ。83年から全日本選抜体重別選手権3連覇など柔道で活躍したが、86年8月にジャパン女子でプロレスデビュー。女子初の総合格闘技大会L-1で98年に優勝。04年7月の参院選に自民党から比例代表で立候補。次点で落選も06年に繰り上げで議員になり、10年7月に落選するまで務めた。170センチ、75キロ。