WBA世界フライ級11位亀田大毅(20=亀田)が、父史郎氏(44)の「闘魂注入パンチ」で決戦への闘志を高めた。10月6日のWBA同級王者デンカオセーン・カオウィチット(33=タイ)戦(大阪市中央体育館)に向けて、28日に都内で練習を公開。セコンドライセンスの無期限停止処分を受けている史郎氏とリング上で打ち合う「パフォーマンス」を披露。久しぶりに父のパンチを浴びて気合を込めた。すでに王者対策としてフィリピン人選手3人と60回のスパーリングも消化。2度目の世界戦は、心身とも充実した状態でリングに上がる。

 大毅がミット打ちをしていたときだった。史郎氏が突然ジムに現れた。ざわつく報道陣を尻目にグローブ、ヘッドギアを装着。リングの上で3分間、大毅とこぶしを交えた。あくまで本気のスパーリングではなく、「パフォーマンス」だったが、残り1分には連打も見せた。1ラウンドを終えた史郎氏は「大毅が絶好調なのは見れば分かるやろ」。大毅は「愛のパンチや」と笑った。

 07年10月に大毅がWBC世界フライ級王者の内藤大助に判定負けした一戦で、史郎氏は反則行為などでJBC(日本ボクシングコミッション)から無期限のセコンドライセンス停止処分を受けた。試合でのセコンドはもちろん、練習の指導も禁じられている。だが大毅の大一番に居ても立ってもいられなかったのだろう。この日は直接的な指導はしなかったが、リングに上がって檄(げき)を飛ばした。「勝ちたいって気持ちは(内藤戦より)今回の方が強い」と大毅も意気に感じていた。

 すでに準備は万全だ。右の強打を武器に加え、アウトボクシングもできる王者の多彩なボクシングに対応するため、長男興毅が厳選した3人のフィリピン人選手をパートナーに招聘(しょうへい)した。(1)右のパンチが強い(2)体格とスタイルが同じ(3)クリンチが得意なアウトボクサーと、いずれも王者の特徴を持つ3人を相手に、1日12ラウンドのスパーリングを2度消化。興毅も「苦戦すると思ったけど最高やった」と絶賛した。

 世間から批判を浴びた世界初挑戦から2年。「夢だった世界王者が目の前に来ている。あとは気持ちだけや」。完ぺきな調整と、父の闘魂注入で大毅の心がさらに引き締まった。【浜本卓也】