西前頭11枚目の旭秀鵬(26=友綱)が連日の1敗対決を制した。同16枚目の阿夢露(31)を引き落とし。兄弟子の旭天鵬(40)にあおられながらトップに立っている。横綱白鵬(30)は6年ぶりの不戦勝で、関脇照ノ富士(23)らと1敗で並んだまま。8日目に全勝がなく1敗で6人が並ぶのは、04年夏場所以来11年ぶりとなる。

 両手ではさんだ顔面を、力強く引いた。まるで、かつての得意技だった。旭秀鵬が手にしていたのは、阿夢露という名のボール。ダンクシュートのように豪快に振り下ろすと、相手はなすすべなく両手をついた。「勝っちゃった」。中日を1敗で折り返すのは自身初。角界屈指の美男子は、さわやかに笑った。

 186センチもあった中学時代、驚異的な跳躍力を誇った。10歳から始めたバスケットボール。片手より高さが求められる両手のダンクを幾度となく決めた。「普通にできた。めっちゃ跳んでいたんです」。朝の稽古後、久しぶりに思い出したダンクの味。その感触がよみがえる勝ち方だった。

 「将来の五輪選手」を育てるモンゴルの政策で柔道留学した岐阜第一高時代、兄を介してあこがれの旭天鵬と出会った。相撲に誘われ、卒業後の再来日では身元引受人になってくれた。

 3年前。兄弟子が初優勝を飾った夏場所は、十両でトップを走った。だが、最後に3連敗。悔しさを隠して「天鵬関に『自分が白星をあげたんですよ』って言いました」。今場所、3日目から一緒に連勝してきた旭天鵬はこの日、先に敗れた。嫌な流れを断てたのは、兄弟子が白星を返してくれたから、かもしれない。

 左膝のけがで、ぶっつけ本番。その中での奮闘に「けがは絶対うそ」と旭天鵬にからかわれる。部屋では缶酎ハイ「ストロング」を4、5本飲む。負けて沈んでいたとき「落ち込んでどうする。飲まんかい」と旭天鵬に諭されたのがきっかけ。40歳の兄弟子に多くを学んできた。それが今、花開いている。【今村健人】

 ◆旭秀鵬滉規(きょくしゅうほう・こうき)本名トゥムルバートル・エルデネバートル。1988年8月9日、モンゴル・ウランバートル生まれ。中3時、バスケットボール全国3位。柔道留学した岐阜第一高で県優勝。07年夏場所初土俵。13年春場所十両優勝。父は元運送会社社長で、母は元大学教授。姉は皮膚科の医師で、兄は日本の防衛大に留学し、モンゴル大統領SPを経て現在は税関職員という「華麗なる一族」。191センチ、152キロ。