関脇照ノ富士(23=伊勢ケ浜)の初優勝。表彰式で直接、優勝旗を手渡したのは、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)だった。「(弟子に)初めて渡した。何か、ジーンと来たね」と感慨にふけった。

 照ノ富士が碧山(28=春日野)を下した相撲。そして日馬富士(31=伊勢ケ浜)が横綱白鵬(30=宮城野)を破った相撲を、審判長として土俵下から見つめていた。

 「心拍数が上がる。平常心ではいれないよね」。そして、泣いて喜ぶ照ノ富士に「初優勝はうれしいんだよ。優勝したら、何も入ってこない」と、その気持ちを推察した。

 13年夏場所前に、照ノ富士が閉鎖された間垣部屋から移ってきた。稽古を見て、基礎が足りていないことに気づいた。「腰が高い。そこが弱点で、つけ込まれて負ける。基本がなっていない」。四股やテッポウの大切さを、とうとうと諭してきた。「そういうのが必要だし、何で必要かを分からせないといけなかった」。

 ここ2場所の照ノ富士の相撲には、目を見張る。「棒立ちにならない。ちゃんと腰を割っている。足を出して、相手が行く方に行く。技だよね。詰めが甘いと逆転されてしまうけど、それがないのは詰めをきちんとやっているから」。相撲の変化を感じ取っていた。

 そして、初優勝をアシストしたのは兄弟子の日馬富士。右肘などに痛みを抱えながらの相撲に、師匠は「日馬富士がよく頑張った。それに尽きる。ケガしている中で、痛いのを我慢してあそこまで…。立派なもんじゃないですか」とたたえていた。