大相撲の秋巡業は12日、静岡・浜松市で開かれ、秋場所に新十両で11勝した正代(23=時津風)が、ダブル大関から鍛えられた。

 まず、豪栄道(29=境川)に指名されて、14番連続で相撲を取った。1勝もできずに終わったその後、ぶつかり稽古に挑もうとすると、胸出し役の相手が急きょ、稀勢の里(29=田子ノ浦)に変わった。ネガティブで知られる性格の持ち主は、このとき「死んだと思いました」と、偽らざる心境を素直に打ち明けた。

 ただ、こうも言った。「経験しなければいけないことだと思っていた。覚悟しました」。そして9分、砂まみれになった。最後にようやく大関を押したが、そこで横綱日馬富士から声が飛んだ。「もう1本、サービスだ」。盛り上がる観客の声援を背中で感じながら、もう1分追加。計10分間のぶつかり稽古だった。

 終わった後は大関に感謝の思い。「だいぶ、自分のためになったと思います。徐々に自力をつけていって、できれば(大関と)取るところまで行きたいですけど…」。

 新十両会見で対戦したい相手を聞かれて「全然ない。できればみんな当たりたくない」と答えた“ネガティブ正代”に、ちょっぴりポジティブさが身についた…かもしれない。