稀勢の里(29=田子ノ浦)の左すねがぼっこりと腫れていた。外掛けで崩され、寄り切られた際に土俵に打ちつけた。左脚を引きずり「うあっ」と顔をゆがめる。ただ、囲んだ記者を「いいですか」と遠ざけたのは打撲の痛みが理由ではない。昨初、秋と並ぶ最多61本の懸賞が懸かった結びの一番。目前に白鵬が勝ち、負ければ優勝が決まる重圧にのまれた。踏み込めず、完敗。今場所後の横綱昇進は消滅した。

 二所ノ関審判部長(元大関若嶋津)は来場所の綱とりへ向け「(白鵬と)2差だと際どい」。友綱審判部副部長(元関脇魁輝)は「明日勝てば、つながる感じにはなる。ただ、今場所よりも(条件が)重くのしかかる。負けたら一からでしょう」と険しかった。八角理事長(元横綱北勝海)は「横綱に上がるには横綱に勝たないと。明日は大事。劣勢になることは上がってもある。今、試されている」と覚悟を説いた。