大相撲の九州場所(11月13日初日、福岡国際センター)で4年ぶりに十両復帰を果たした竜電(25=高田川)が9日、地元の甲府市で行われた秋巡業に参加して故郷に錦を飾った。

 稽古まわしこそ若い衆の象徴の「黒色」だが、場内アナウンスで来場所の十両復帰が何度も紹介され、土俵上でも祝い金を手渡された。「うれしいことです。いっぱい群がられました。こんなことがあるんですね」と喜びに浸った。

 新十両で臨んだ12年九州場所の8日目に右股(こ)関節をけがし、途中休場。その後も治りきらないまま相撲を取って悪化させ、十両経験者としては当時、昭和以降9人目の序ノ口転落も味わった。実際「気持ちは折れました」とも言う。

 だが、師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)から「一からやり直そう」と励まされた言葉が今も胸に残るほど、大きかった。四股も踏めない状況から再スタートし、最初のけがから2年後に序ノ口、序二段、三段目と3場所連続で優勝。再び戻った幕下を10場所経験して、十両復帰をつかんだ。「休んでいたときは長かったですが、復帰してからの2年間はだいぶ充実していました」と、この4年間を振り返った。

 この日、新十両直前の秋巡業まで1年間付け人を務めた大関稀勢の里に、感謝の意を込めて地元の名物「信玄餅」を贈った。「親に買ってきてもらって、代わりにサインをもらっちゃいました」と笑ったが、稀勢の里は「信玄餅の方が(価値が)高いですよね」と笑い返した。そして、大関はかつての付け人を振り返って「まじめ。山梨の関取は珍しいから頑張ってほしい。幕内以上に行ける力はある。また一緒に稽古ができたらいいし、対戦も待ち遠しい」と祝福した。

 「新十両に昇進できたのは稀勢関のおかげ」と感謝し、尊敬している竜電の締め込みは、新十両時につけて倉庫に眠っていた、当時の稀勢の里と同じえんじ色を再び締める。当時、発足段階で頓挫してしまった個人後援会も再度、結成される予定。「九州場所で、自分のいい相撲を取って勝ち越し以上を目指したい。あまりプレッシャーを感じずに頑張りたいですね」と、4年ぶりの舞台を心待ちにした。