周囲が思うほど、横綱鶴竜(31=井筒)はヒヤリとはしていなかった。

 突き、押しから左を差して前に出た。だが、その差し手を抱えた松鳳山に土俵際、小手投げを食らって裏返った。軍配は相手。すぐに物言いがついた。

 「しっかり相手を見ながら倒れていった。負けはないなと思っていたら、軍配が向こうに行ったので『アレッ』と思った。相手を見て倒れたので、悪くても同体だろうと思った」。

 結果、松鳳山の足が出るのが早かったとして、行司軍配差し違えで白星を手にした。「小手を嫌がらずに出て行ったから、良かったと思う。しっかり体が反応して動いている」。落ち着いて勝因を分析する姿は、先場所の優勝の自信が表れているのか、風格に満ちていた。