横綱白鵬(31=宮城野)の意地だった。昨年夏場所13日目での全勝同士対決。右四つの白鵬があえて、稀勢の里の左四つで組んで制した。「勝つなら勝ってみぃ、それで横綱になってみろ、という感じ」と、言い放った。その再現をするかのように、この日の支度部屋では左差しを繰り返し、臨んだ一番だった。

 右を張って左を差した。「真っすぐいって。宿命、運命に任せた感じです」と厳しく攻めたてた。だが、土俵際で粘られた。寄っても寄り切れない。こらえられて逆転のすくい投げを食らった。「最初軽いと思ったけど。土俵際で強かったね。強い大関が優勝したと思いましたね」と素直に認めるしかなかった。

 横綱在位57場所で、初めて4場所連続で優勝を逃した。稀勢の里の横綱昇進は確実で、来場所は同じ地位での対戦となる。支度部屋で髪を結ってもらう間に流れていた優勝インタビューを、鋭い目つきで、言葉を発さず見つめた。悔しさがあってもおかしくないが「今年ずっといい相撲取っていきたい」と、振り返ることなく力強く前を向いた。