6年前の秋、稀勢の里に「ツイッターやってるでしょ?」と聞かれた。今ほどSNSがはやっていないころ。なぜツイッターで私を見つけたのか聞くと「知り合いに見せてもらっただけ」ととぼけていた。実はこのころ、稀勢の里もツイッターのアカウントを持っていたようだ。

 だが、当時からSNSはやらないと公言し、アカウントはすぐに削除された。力士は神秘的な面があった方がいい、というのが理由。今も、自ら内面を明かすようなことはしていない。当時の鳴戸部屋は最寄りのJR馬橋駅から徒歩20分の距離にあったが、自転車にも乗らなかった。関取として、俗っぽいところを見せたくないようだった。

 稀勢の里の話を聞いていると時々、「華(はな)」とか「粋(いき)」という言葉が出てくる。何が粋なのか? 伝統文化の継承者としてどう振る舞うかということを、20代前半から常に意識していた。先代師匠のような着物を仕立てたり、着こなしたりするには時間がかかるということも気にしていた。

 30歳を超えて横綱昇進。今や、一流が似合う男になった。【10~13年大相撲担当・佐々木一郎】