横綱白鵬(32=宮城野)が、西前頭筆頭の遠藤を下して全勝をキープした。昨年九州場所で黒星を喫して以来の対戦だったが、激しい攻めで退けた。前日18日に親友で歌舞伎俳優の中村獅童(44)が、肺腺がんと診断されたことが発表された。闘病生活が始まる友を勇気づける1勝になった。大関とりの関脇高安が、関脇玉鷲に敗れて初黒星。横綱日馬富士は平幕碧山を下して、白鵬と2人だけの全勝を守った。

 白鵬は右のかち上げで突き放すと、徹底した突き押しで攻め続けた。遠藤の胸元を突きを打ち込み、顔を張り、15発以上を浴びせた。最後はいなして体を泳がせて押し出し「立ち合いが良かった。その流れで勢いがついて最後までいった感じかな」と気合の一番だった。昨年の九州場所。この日と同じ全勝で迎えた6日目に遠藤と対戦。寄り切りで敗れると、さらに3敗して優勝を逃した。その鬱憤(うっぷん)を晴らすかのような激しい攻めだった。

 友へ贈る1勝になった。この日の朝稽古後、肺腺がんと診断された友人の獅童について「早く見つかって良かったです。結婚したばかりだからね。まぁ早く治してもらいたいね」と心配した。しかし、連絡は取っていない。「いろいろ忙しいだろうから。良くなってまた話したいね」と気遣った。

 通算1001勝を挙げた昨年の九州場所4日目に獅童と市川海老蔵が祝福に訪れた。場所前には博多座の公演を見に行った。4月下旬、インターネット動画サイト「ニコニコ動画」と連動した超会議場所の際には、同じ会場で行われた獅童の公演に姿を見せるなど、親密な仲だ。場所前には「頑張りましょうね」とメールで互いの活躍を祈った。

 優勝から遠ざかること丸1年。昨年の秋場所は、右足親指の手術で全休。九州場所は調子が上がらず、今年の初場所と春場所は、新横綱稀勢の里に主役の座を奪われた。その稀勢の里も2敗。日馬富士と2人だけの全勝に「当然でしょ」。強い横綱が帰ってきた。【佐々木隆史】