野性味あふれる風貌と、迫力ある相撲。一見こわもての高安だが、ひとたび土俵を下りれば一転しておちゃめになる。そのギャップも魅力の1つになっている。夏場所に来た30代女性は「クマみたいでかわいい」。20代女性も「完全にクマとして見てます。つぶらな瞳もたまらない」。そんな声に高安は「自由に呼んでください」と苦笑いした。

 今はクマだが、昔の愛称は「マルちゃん」だった。周囲を圧倒する体つきに、リトルリーグに入った土浦小4年時に先輩から、西武や巨人で活躍したドミンゴ・マルティネス内野手に似ていると、名付けられた。中学時代、男は「マル」、女は「マルちゃん」、後輩は「マル先輩」。担任からも愛称で呼ばれて愛された。

 芸達者で、角界屈指の美声を誇る。トレーニングの合間の休憩中にダンスを踊り、結局満足に体を休ませられなかったこともしばしば。両親の結婚記念日には年月の数だけバラの花束をサプライズで贈り、泣かせもした。「人を驚かせたり喜ばせたりするのは小さいころから好きです」。

 その半面、昨年10月の広島市巡業では夜、1人で原爆ドームを訪れて手を合わせた。真剣に見て回った。

 「気は優しくて力持ち」。そんな形容が、ぴたりと当てはまる。【今村健人】