西十両4枚目の安美錦(38=伊勢ケ浜)が大きな“代償”を払って、9勝目を挙げた。

 それはまげをつかまれるという反則勝ち。「髪の毛、どうしてくれるんだよ。少ない髪の毛をつかむかよ。この(髪の)量で反則勝ちするのも、なんか申し訳ないな。初めての勝負結果だね。今までないよ、つかむところがないんだから…」。関取最年長はそう苦笑いして「でも、勝ちは勝ちだね」と喜んだ。

 3敗で十両トップを走っていた大奄美(24=追手風)との一番。精力的に土俵の中で動き、右を張って上手をつかむなど、先手先手を取り続けた。相手に引かれて落ちたが「残せると思った。でも、バーンと落ちて、なんで落ちたんだろうと思っていたら、パサッと(髪が)落ちてきて。負けているし、切れているし『なんだよ!』とイラッとしちゃった。ちょっと手が入っただけで、ブチブチっとなったから…」。大事な髪の毛を失ってしまったものの、物言いの末に、せめて白星だけはつかんだ。

 09年を最後に、名古屋場所では勝ち越したことがなかった。だが、今年は後援者が酸素カプセルを部屋に用意してくれたという。場所に帰ったらすぐに入り「誰もいなかったら、2時間くらい入っている。スッキリするね」と体のケアに役立てている。「いつも負け越したり、けがしているイメージだけど、今年はいい名古屋場所だね。最後だからこんなにいいのかな?」。冗舌なベテラン。土佐ノ海の38歳6カ月を上回る昭和以降、史上最年長の再入幕も視野に入ってきた。