大相撲の横綱白鵬(33=宮城野)の父ジジド・ムンフバトさんが9日、肝臓の病気などのためモンゴル・ウランバートルの自宅で死去した。76歳。白鵬の母タミルさんが明かした。関係者によると、昨年6月ごろには体調を悪化させた姿が目撃され、最近はほとんど話せなかったという。数日前に放送されたテレビ番組には夫婦で出演したが、質問にはタミルさんが受け答えしていた。

 ムンフバトさんは41年、モンゴル・トブ県エルデネサント生まれ。レスリングでは64年東京大会から五輪に5大会連続出場。68年メキシコ大会では87キロ級で銀メダルを獲得した。同国初の五輪メダリストで、年に1度開催されるスポーツの祭典「ナーダム」では、モンゴル相撲で6度の優勝を果たした国民的英雄。07年に日本と同国の国交樹立35周年を記念して東京都で講演するなど、たびたび来日。20回目の優勝を飾った11年秋場所では初めてパレードの車に一緒に乗り、白鵬が「おやじに認めてもらえた」と語るなど常に尊敬し、目標とする人だった。

 親方になるには日本国籍が必要だが、国民的英雄の息子の国籍変更となれば、母国が騒然となることは必至。だからこそ白鵬は数年前から思案しているこの問題など、人生の大きな決断は父の判断を仰ぐことを第一としていた。