現役引退を決断した大相撲の横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)が16日、東京・両国国技館で引退会見を行った。

引退を決意した心境について「横綱としてみなさまの期待にそえられないということは非常に悔いが残りますが、私の土俵人生において一片の悔いもございません。たくさんの人に支えられて1人1人の顔を思い出しますし、感謝の気持ちでいっぱいです」と途中で声を詰まらせながら、涙を流しながら明かした。

17年初場所に初優勝を果たし、72代横綱に昇進。同年3月の春場所で横綱として優勝を果たしたが、13日目に左の上腕筋と大胸筋を損傷。この大けがが力士生命を大幅に縮める要因となってしまった。あらためて負傷箇所について問われると「徐々によくなってきましたが、自分の相撲を、ケガする前に戻すことはできなかったです」と声を絞り出した。

進退を懸けて初場所に臨んだ稀勢の里は、初日から3連敗。昨年9月の秋場所から3場所にわたって8連敗(不戦敗除く)となり、横綱としては貴乃花を抜いてワースト記録となっていた。「潔く引退するか、ファンの人たちのために相撲を取るかというのは、いつも稽古場で自問自答していた。応援してくれる人のためにも相撲を続けようという判断になってやってきましたが、このような結果となってファンの人たちには申し訳ないという気持ちです」とまた涙を流した。

17年間の現役人生の思い出を振り返ると「ありすぎてなかなか思い出せない」。だが思い出の一番には、17年初場所千秋楽で横綱白鵬を破った一番を挙げた。「2011年に大関昇進した時は千秋楽で琴奨菊関に負けました。その悔しい思いがあって、次に昇進する時は絶対負けないという気持ちで臨みました」と振り返った。

日本相撲協会はこの日、都内で理事会を行い、稀勢の里の引退と年寄「荒磯」襲名を承認した。稀勢の里は今後、田子ノ浦部屋の部屋付き親方として後進の指導にあたる。「ケガに強い力士を育てたい」と話した。