先場所優勝の新関脇貴景勝(22=千賀ノ浦)が関取最重量の逸ノ城を押し出し、2敗を守った。前日6日目の栃煌山戦では、四つに組まれあっけなく送り出されただけに、不安を一掃する一番となった。阿武咲は今場所初黒星を喫し、全勝を続ける横綱白鵬が単独トップに立った。

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226キロの巨体に、175センチの貴景勝が懐へ飛び込んだ。両手で突き放すたびに間合いを取り、逸ノ城の判断能力を乱した。3発目で俵まで追い込むと、左上手でまわしを取られたが、体勢は貴景勝に分があった。押し出して、これで逸ノ城には4連勝。時間をかけずに勝負を決め「相手が大きい体で体力負けするから、気持ちだけは負けないようにした」と支度部屋でも眼光は鋭かった。

「今日は切り替えられたけど、昨日は勝負師として失格でした」。前日6日目の栃煌山戦では、いなされて四つに組まれる最悪の展開。最後は背中を見せる形で送り出された。連続優勝を期待される重圧からか、今場所の序盤戦は普段より長く感じた。土俵に立つ者として、弱音は吐きたくないが「戦う職業としては一番みっともない精神状態だった」と集中力を欠いていたことを明かした。

最大の敵は自分自身だ。8日目は同学年の阿武咲と4度目の対戦となるが、そのことを問われ「いや、知らなかったです」と一言。今場所は取組が終わり、支度部屋を引き揚げるまで、翌日の相手を付け人に尋ねない。それまで対戦相手に興味を寄せないのも、一番一番に集中するためだ。初優勝した先場所では「弱い自分が何度も出そうになった」と本音を漏らした。「明日もそれと勝負して強い自分を出せるようにしたい。それで負けたらしょうがない」。22歳の若武者には、理想の力士道がある。【佐藤礼征】