日本相撲協会は8日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、鳴戸部屋の三段目力士(20)による、未成年の弟弟子への暴力を含むいじめに対する処分を決めた。三段目力士からは引退届が提出されており、この日付で受理。それに先立ち今月4日、協会のコンプライアンス委員会は「引退勧告相当」と決め、八角理事長(元横綱北勝海)に答申していた。理事会も引退勧告相当と確認し、鳴戸親方(元大関琴欧洲)は3カ月の報酬減額10%となった。

三段目力士は当初、弟弟子の頭をスマートフォンの角でたたくなどの暴力を振るっていた。昨年9月ごろからは柔道の絞め技を繰り返し、同12月ごろからは別の弟弟子に命じて絞め技をかけさせていた。12月25日ごろには、実際に被害者は1度失神。絞め技をかける行為は1月まで10回程度に及んだ。問題を発表した1月31日当初、命令されていじめを行った弟弟子は成人1人だったがこの日、別に未成年の弟弟子もいたと発表。ともに力士養成員で成人は注意処分、未成年は指導処分になると決まった。

また関係者によると、いじめの実態はさらに悪質だったと判明した。絞め技に苦しむ様子をふざけて動画撮影したり、絞め技をかけない条件として金銭を要求するなど脅したりしていたという。昨年12月に協会が力士の暴力に対する処分基準を定め、研修会を開いた直後のタイミングでもあり、厳罰は避けられなかった。理事会には呼ばれなかったが、コンプライアンス委員会に出席した鳴戸親方は反省した様子で「今後、2度とないように改善したい」と話したという。

「引退勧告相当」とするコンプライアンス委の答申内容を鳴戸部屋関係者は把握していなかったが、鳴戸親方が委員会後、引退届を提出した。加害者が反省し「責任を取りたい」と話していることから引退届を受理することとなった。鳴戸部屋が仮設で師匠不在だったことが一因だけに、マネジャーを1人から2人に増員、4月からは新設した都内の部屋で、師匠夫妻が同居する体制の強化などを含んだ指導計画が提出された。今後も月1回ほど報告書提出の予定。被害者本人とその両親は、被害届提出の意思はないという。

◆一人前は十両以上 相撲界は伝統的に、十両以上の関取衆が一人前と認められ、幕下以下は力士養成員で「若い衆」と呼ばれる。原則、場所ごとの手当以外は無給。通例ではファンへのサインも禁止。不祥事の際に相撲協会は実名を伏せ、今回も非公表。加えて被害者とその両親から「寛大な報道を望みます」と伝わっているため、実名発表は避けられた。