横綱稀勢の里の引退に始まり、新大関貴景勝誕生、トランプ米大統領観戦、暴力問題で十両貴ノ富士が引退など、さまざまな出来事が起きた2019年の大相撲。今年1年間、幕内を務めた全29人の力士が対象の連載「第8回日刊スポーツ大相撲大賞」は、そんな陰で生まれた好記録や珍記録を表彰する。

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今年6場所全て勝ち越した小結阿炎(25=錣山)は、快挙にもあっけらかんとしていた。「全然、気にしてないっす。たまたまだと思う。勝ち越しも負け越しも紙一重だから」。幕内で関脇以下の年6場所勝ち越しは17年の御嶽海以来2年ぶり。1月の初場所時点では西前頭10枚目だったが、終わってみれば三役に定着しつつある。一方で小結として2場所連続勝ち越しながら、関脇に昇進できなかった。「番付運」に恵まれないようにも見えるが、本人は「(番付は)どこでもいい。勝っていれば、どうせいつか上がるから」と、どこ吹く風。来年は大関、初優勝を見据える。

対照的な成績だったのが錦木(29=伊勢ノ海)で、年6場所を全て負け越した。初場所では鶴竜を撃破して初金星を挙げたが「自分でもよく分からないほど、気持ちと体がかみ合わなかった」。2桁黒星を3度喫しながら最後まで幕内に残ったのは、ある意味「怪記録」かもしれないが…。十両からの再出発となる見通しの来年1月の初場所(12日初日、東京・両国国技館)に向けて「まず8勝。それしか考えていないですよ」と、苦笑いを浮かべ切実に話した。【佐藤礼征】