優勝45回の幕内最多優勝など、数々の記録を打ち立てて引退した元横綱白鵬の間垣親方が1日、東京・両国国技館で、師匠の宮城野親方(元前頭竹葉山)同席の元、記者会見に臨んだ。師匠、間垣親方のあいさつで始まり、会見は約40分にわたって進んだ。

-記憶に残る相撲はいくつもあると思いますが、1つだけ選べますか

間垣親方 たくさんありますけど、1つだけは選べません。2つにしたいと思います。上がってきて上位の壁に当たった時に、最初で最後の金星というのが横綱朝青龍関に勝った一番と、何と言っても双葉山関の69連勝の(記録に挑んだ)時に負けた稀勢の里関です。この2つは挙げたいです。

-あの九州場所で連勝が止まった瞬間は、今でも思い起こすことがあるか

間垣親方 あの負けがあるからここまで来れたというのは、あると思います。

-師匠として、どんな指導者になってもらいたいか

宮城野親方 協会とか人の見本になるような、自分が若い衆のための一番の教えをしてほしい。いろいろな面で引っ張って行く、そういう気持ちになってくれたらいいなと思います。人の見本になってもらいたい。そうして自分と似たような素晴らしい力士を作ってもらえたらなあと、協会のためにも頑張ってもらいたいと思っています。

-今の師匠の話も含めどんな親方になっていこうと思うか

間垣親方 優しさと弟子思いの親方になっていきたいと思います。

-母国のモンゴルでも引退は驚かれているがメッセージは

間垣親方 父を愛し、自分を愛し、応援してくれたことが今日、また結果につながったと思うので、モンゴルの人々に、この場を借りて感謝の気持ちでいっぱいです。

-日本の皆さんへのメッセージを

間垣親方 私を育ててくれた、そして私が出会った方々の応援があるからこそ、この20年間、頑張れたと思いますし、その方々に感謝の気持ちでいっぱいです。

-土俵に忘れてきたもの、思い残すことは

間垣親方 全部、出し切りました。

-千秋楽で土俵にあがる際、額を土俵(の斜面)につけた、あの思いは

間垣親方 呼出に名前を呼ばれ、これが最後の一番だと思い、土俵にこの20年間の感謝の気持ちを伝えて土俵に上がりました。

-まだやれるという声もある中、膝の状態は医師からどう伝えられていたのか

間垣親方 この半年で2回の手術を受け、コロナ感染になりまして、その中でリハビリと稽古、トレーニングを続けた中で、膝も悪化しました。医師からは「私がやることは全部、終わりました。次に右膝を痛めた場合は人工関節になる」という報告を受けました。

-目標だった2ケタ勝利を10日目に達成した時、もう引退を決意した

間垣親方 10日目を乗り越えたときに、これであと5日間、取り切れる。やっぱり15日間、全うして引退したいという気持ちもありましたし、出来るものなら優勝して引退したいという気持ちがあったものですから、10日目に師匠をはじめ、皆さんに伝えました。

-あらためて横綱とはどんな存在だったか

間垣親方 土俵の上では鬼になって勝ちに行くことこそが、横綱相撲と考えてきました。その一方で、周りの皆さんや横審の先生の方々に、横綱相撲というものを目指したこともありましたが、最終的にその期待に応えることが出来なかった。

-照ノ富士への思い、秋場所はどのように見ていたか

間垣親方 名古屋ではやっぱり、後を託せるなと感じましたし、本来なら名古屋後に引退という形でいきたかったところではありますが、照ノ富士関の横綱昇進のこともありましたし、オリンピック、パラリンピック、また9月場所前に(引退発表)という気持ちはありましたが、部屋からコロナ感染もありまして、今日までなって(発表が延びて)しまいましたが、本当に若手力士が力を付けてきたことは、名古屋場所でも15日間、感じましたし、バトンタッチというか、後を託せると思いましたし、ぜひとも照ノ富士関に頑張ってもらいたいなと思います。

-横綱になって良かったと思えること

間垣親方 横綱というより、大相撲と出会ったことが私の全てですし、私を選んでくれた師匠と出会ったことに感謝ですし、相撲から離れれば私は何も出来ない。本当にこの20年、大相撲には感謝しています。

-厳しいこともあったが今後の人生にどう生かす

間垣親方 自分の経験を生かし、親方としては弟子たちに人に優しく、自分に厳しく、義理と人情を持った力士に育ってもらいたいなと思っています。

-一番、悔しかった一番は

間垣親方 先ほどの思いでの一番にあった、稀勢の里関に63連勝で敗れた一番です。その一番があったからこそ、この63連勝にふさわしい、恥ずかしくない相撲を取らなければいけないという思いで、ここまでやって来れたと思います。

-横綱として守り続けてきたものは

間垣親方 横綱、大関というのは相撲協会、大相撲の看板力士でもあるし、昇進から14年間は自分に勝つことが一番たいへんだという思いがありましたが、横綱に昇進するのも大変なことでもありましたが、それを14年間守り続けたというのは、自分を褒めたいと思いつつ、そういう気持ちでいっぱいです。

-いろいろな世界でチャレンジしている若い世代へのメッセージやエールがあれば

間垣親方 基本を大事にして、まずは型を作って、その型が出来上がった時に型を破る。これが出来ていけば、必ず強くなって行くんじゃないかと思います。私も相撲人生の中では、たくさん技がある人は、一つも怖いことはなかったです。型を持った人間が一番、怖かったです。