[ 2014年5月15日12時20分

 紙面から ]13年8月、ウルグアイ戦で倒されながらも鋭い視線でゴールを見つめる本田圭佑

 【ミラノ(イタリア)13日=八反誠、益子浩一、波平千種通信員】6月12日のW杯ブラジル大会開幕まで1カ月を切った。日本代表23人も決まった。FW本田圭佑(27=ACミラン)は公言する「W杯優勝」へ、どう進むのか。日刊スポーツは1月のミラン移籍後イタリアで密着取材を続けてきた。本田が語る、最悪の状態まで想定した究極の強気理論とは-。2回に分け独占で伝える。第1回はあらためて「W杯優勝」への決意を。

 W杯メンバー23人発表の日、夏時間のイタリア・ミラノの11日夕方(日本時間12日未明)、本田が日刊スポーツの直撃取材にひとことだけ口を開いた。

 昼間のアタランタ戦では前半45分で交代させられた。移籍後、ミランではほとんど活躍できず酷評され続けている。左足首のけがもあった。動きに切れもなくプレーにスピード感が出てこない。ネガティブな要素を探せばきりがない。

 あえて聞いた。「こんな状態で、本当にW杯で優勝できるのか?」。本田の答えは「YES」ではなく、それ以上。究極ともいえる強気の理論だった。

 本田

 たとえばオレがケガをしてプレーできなくても、前十字(靱帯=じんたい)切ってもワールドカップに帯同して優勝させるというイメージまで持っている。

 プレーして優勝まで導くことは、可能性はともかく現実的だ。だが、苦境のミランでも、めげずに最悪の状態まで見通す。もしプレーできなくても、それでも「優勝させる」と、本田はぶち上げた。

 2得点した4年前の南アフリカ大会のようにブラジルでも自分で決めて勝ち、力を合わせ香川や岡崎にアシストして勝つ…。そんなありきたりなプランAやBは口にしない。

 ザックジャパンでは代役不在の絶対的存在。プレーできなくなっても、許されるなら同行し、先頭に立って、雰囲気をつくり上げ、指示し鼓舞する。そうやって公言する「W杯優勝」を成し遂げる。考えられ得るすべての状況を想定し、優勝させるための道筋を1本ずつ確認しながら本番に向かっている。

 有言実行で生きてきた。人生でもサッカーでも、掲げて達成できなかったこともある。だが、掲げておいて努力しなかったことは1度もない。「プレーできなくても優勝させる」。この作業も進めてきた。

 3月のニュージーランドとの親善試合(国立)では、所属のマンチェスターUで苦しむ香川に「真司が活躍してもらわないとW杯は勝てない」と、PKのキッカーを譲った。この合宿中には1月にドイツ2部に移籍し、新天地でもがくFW大迫(1860ミュンヘン)にも声を掛けている。

 鹿島での安定した地位を捨て、W杯イヤーにあえて厳しい環境に飛び込んだ心意気を買った。新顔の1トップ候補に期待するからこそだった。ある代表選手によると「日本にいた時みたいにパスが来ないよな?

 分かるよ。でも我慢しろ。絶対自分の力になる」と語り掛けていたという。

 ちょうど名門ミランで慣れない右サイドに追いやられ、批判にさらされていたころ。そんな時に大迫を気遣い奮い立たせた。同じ街に住む長友(インテルミラノ)とも意見交換を続けている。

 真実はもう1つある。ミランで苦境に追い込まれている。それは、本田にとってある意味、計算通りであるというのだ…。【八反誠】<本田の仲間への働きかけ>

 ◆DF今野へ(13年6月)

 W杯出場決定後の共同会見で主力に課題を突き付ける。壇上に並ぶ控えめな今野にはズバっとひと言。直前に「ビッグクラブの人と一緒にプレーできるのは本当に楽しい」と言ったいじられキャラの先輩に「今野選手みたいに憧れみたいな気持ちで持っていてもらったら困る。大先輩なので、どんどんアドバイスをくれればいいと思っています」。

 ◆FW柿谷へ(13年9月)

 親善試合グアテマラ戦で初めてともにプレー。肩を抱き顔を近づけアドバイス。身ぶり手ぶりで才能豊かな若手に指導した。試合後には「(可能性は)計り知れない。どこでボールを受けて、どこにボールを出せばいいのか分かっている。曜一朗はすべてを兼ね備えている」と絶賛。それを伝え聞いた柿谷は「もっとそう思ってもらえるように、信頼してもらえるようにできればいい」と言った。