【カンヌ(フランス)25日=木下淳】特色ある作品を集めた「ある視点」部門の授賞式がドビュッシー劇場で行われ、黒沢清監督(52)の映画「トウキョウソナタ」(今秋公開)が最高賞「ある視点部門賞」に次ぐ「審査員賞」に輝いた。日本人の監督作品の同部門での受賞は初めて。香川照之(42)と小泉今日子(42)が夫婦役を演じた。公式上映が序盤の17日夜で監督もキャストも既に帰国していたため、プロデューサーのバウター・バレンドレクト氏が審査委員長の独映画監督ファティ・アキン氏から代理で賞を受け取った。

 黒沢監督は01年に「回路」、香川も同年の「歩く、人」(小林政広監督)で「ある視点部門」に参加。7年ぶりの出品でそろって栄冠を手にした。黒沢監督は同年の国際批評家連盟賞を受賞、香川も00年に中国映画「鬼が来た!」でコンペ部門のグランプリを獲得しており、ともにカンヌ2度目の受賞となった。

 日本で吉報を受けた黒沢監督は「驚きました。僕たちが家庭の中で抱えている小さな問題は、どうやら世界の問題でもあったようです」。香川は「朗報を待っていました。病床の黒沢監督の奥さまにこの受賞が励みになることを心から望んでいます」、小泉は「思わぬご褒美に身が引き締まる思いです。でも、やっぱりうれしい」とコメントした。

 同部門には20作品が出品され「ある視点部門賞」はカザフスタンのセルゲイ・ドボルツェボイ監督の「トゥルパン」に贈られた。