「團菊祭五月大歌舞伎」(東京・歌舞伎座)の、尾上左近あらため3代目尾上辰之助襲名披露狂言が華やかに上演中だ。
立役と女形を“兼ねる役者”として、昼の部「寿曽我対面」では血気盛んな曽我五郎を、夜の部「鬼一法眼三略巻 菊畑」では、かれんさと色気もある若衆、奴虎蔵実は牛若丸をつとめている。辰之助の魅力を感じられる。
両演目とも劇中口上があり、辰之助は「より一層芸道に精進いたします」と述べた。シンプルでまっすぐな言葉に、決意がぎゅっと詰まっていた。
公演直前の取材で、父尾上松緑から教わった“兼ねる役者”としての心構えについて話していた。辰之助は「父には兼ねる役者は、どちらも100%やれる役者のこと。人生2回分頑張らないといけない、と言われました」と語った。人生2回分の努力というものがどれほど壮絶なことか、想像するだけでぼう然としてしまうのだが、「祖父(=初代辰之助さん)、7代目(尾上菊五郎)のあこがれに向かって努力していきたい」と、すがすがしい表情で話していたのが印象に残った。
これからやってみたい役や演目について聞かれると、次々に飛び出した。「祖父がやってきたものはすべてやりたい。7代目のおにいさんに見ていただきたい役もたくさんある」とし、「蘭平物狂」「坂崎出羽守」「暗闇の丑松」「名月八幡祭」の縮屋新助、「弁天娘女男白浪」の弁天小僧、「仮名手本忠臣蔵」の五段目、六段目の早野勘平などを挙げた。さらに「土蜘」「鑑獅子」など変化ものの舞踊が好きだとし、祖父が出演していた「オセロー」「リチャード三世」といったシェークスピア劇も「勉強したい」と意欲を見せた。個人的に好きな演目も多く、辰之助で全部見たいし、ぜひやってほしいと思った。実現する力を持っている、とも感じた。
同世代とも切磋琢磨(せっさたくま)している。市川染五郎、市川團子とは年齢も近く、最近では「染團辰」と呼ばれることも多い。3人で食事に行くそうで「あまり同世代がいない分、団結してやっていこうという話はよくしています。これからやりたいお芝居や、歌舞伎をどう盛り上げていくかってこともお話ししたりします」と、心強い言葉もあった。
3代目辰之助襲名を見て、また新しい時代が来るのだなと感じた。



