建て替えのため今年4月で59年の歴史に幕を閉じた東京・歌舞伎座に16カ月間密着したドキュメンタリー映画「わが心の歌舞伎座」(十河壮吉監督、来年1月公開)が、10月の韓国・釜山国際映画祭に出品、ワールドプレミアが行われることが1日、分かった。その後も各地の国際映画祭への出品を目指し、世界マーケット進出を狙っている。

 「わが心の歌舞伎座」は、昨年1月2日の「古式顔寄せ手打ち式」から今年4月30日の「閉場式」まで16カ月におよんだ歌舞伎座さよなら公演に密着した史上初の歌舞伎座ドキュメンタリーだ。11人の幹部俳優による歌舞伎座への思い出を語るインタビューをはじめ、さよなら公演約100演目の中から35演目の一部が紹介され、初公開となるけいこ風景や舞台の制作現場、楽屋の様子など裏側もたっぷりみせ、知らざる歌舞伎座の神髄に迫っている。

 国内では来年1月15日から全国約35スクリーンでロードショー公開されるが、その前に世界に打って出る。アジア最大の映画祭である釜山国際映画祭(10月7~15日)の社会派ドキュメンタリーを中心とした「ワイドアングル部門」への正式出品が決まり、ワールドプレミアが行われる。その後も各地の国際映画祭への出品を目指し、ニューヨークのリンカーン・センターでは舞台をそのまま映像化したシネマ歌舞伎とともに特集上映されることが決まり、ローマでも特集上映を予定している。

 世界無形遺産に認定された「歌舞伎」はこれまでも数多くの海外公演を行ってきたが、映画となれば鑑賞人口は何十万、何百万と飛躍的に増える。すでに解体された歌舞伎座が歌舞伎のグローバル化に最後の一役を買う。