トム・クルーズが、英ロンドンで行われていた「ミッション:インポッシブル6」の撮影中に、スタントに失敗して足首2カ所を骨折する重傷を負ったことが明らかになりました。完治まで数カ月を要すると言い、撮影は4カ月ほど延期されることとなりました。建物の屋上から屋上に飛び移るアクションシーンを撮影中、距離が足りずに壁に激突。事故後なんとか自力で屋上にのぼったものの、足を引きずる姿が目撃されていました。クルーズは前作「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」(15年)の撮影でもスタントなしで離陸する軍用機にしがみつくなど自ら過酷なアクションシーンを演じることで知られていますが、今回も命綱をしていたとは言え一歩間違えば大惨事になっていた可能性もあり、今後はスタント禁止令が下る可能性もありそうです。

 ハリウッドではこのところ俳優やスタントマンの撮影中の事故が多発しており、安全面の見直しや対策を求める声も出始めています。クルーズが負傷する事故の数日前には、カナダ・バンクーバーで行われていた「デッドプール」続編の撮影現場で、スタントドライバーの女性が死亡する事故が起きたばかりでした。ザジー・ビーツ扮するドミノ役のスタントを務めていたジョイ・ハリスさんが、バイク走行シーンのスタントでカーブを曲がり切れずにオフィスビルの1階部分に激突。ドミノ役はヘルメットを被っていない設定だったため、ハリスさんもヘルメットをしておらず、帰らぬ人となってしまいました。報道によるとハリスさんはプロのレーサーでしたが、スタントの経験はなく、今回の起用に問題があったのではないかとの声も出ているようです。また、その1カ月前にもドラマ「ウォーキング・デッド」シーズン8の撮影中にスタントマンが高さ約6.7メートルのバルコニーから転落して死亡する事故が起きています。下には安全マットが敷かれていましたが、転落場所がマットからわずかにずれてしまい、頭部をコンクリートに打ち付けてしまったとのことです。さらに2年前には、今秋に公開予定のクルーズが実在するCIAエージェントを演じる「バリー・シール/アメリカをはめた男」の現場でスタッフを乗せた小型飛行機が墜落して撮影パイロットを含む2人が死亡した他、2014年には「ミッドナイト・ライダー」の撮影で陸橋を渡る線路上でカメラテストをしていた最中にスタッフが列車にはねられて死亡する事故も起きています。

 スタントマンだけでなく、撮影中に俳優が負傷する事故も起きています。「アベンジャーズ」シリーズのホークアイ役で知られるジェレミー・レナーは、新作映画「Tag」の撮影中に両腕を骨折していたことを先月明かしましたが、昨年は「メンズ・ライナー」シリーズ第3弾の撮影中に主演のディラン・オブライエンが車にひかれる事故も。また、ハリソン・フォードが「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(15年)の撮影セットで足を骨折する事故に見舞われた他、過去にはジョージ・クルーニーが「シリアナ」(05年)の撮影中に椅子から投げ出されて頭を強打して今も後遺症に悩まされていると言われていますし、ブラッド・ピットは「トロイ」(04年)の撮影中にアキレス腱を負傷しています。さらにひと昔前には「トワイライトゾーン/超次元の体験」(83年)の撮影中に主演のヴィック・モローが、ヘリコプターを使った撮影中に上空から落下してきたヘリコプターの羽に巻き込まれて亡くなる悲惨な事故もありました。長時間に及ぶ撮影による過労やタイトなスケジュール、準備不足など様々な要因が考えられますが、事故を防ぐ対策に真剣に取り組む必要がありそうです。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)