菊田一夫演劇賞の贈賞式が先日、行われたが、大賞の花總まり(43)をはじめ、受賞者のあいさつは、心から喜ぶ思いにあふれていた。

 花總は人気・実力を兼ね備えた宝塚歌劇団の人気トップ娘役として94年から06年まで12年3カ月も君臨。「エリザベート」のタイトルロールで光り輝き、トップ娘役在任期間として歌劇団史上最長だった。しかし、退団後は華やかな舞台から姿を消した。宝塚時代の相手役トップスター和央ようかの事務所に入り、裏方に回った。退団から4年後、女優復帰し、再チャレンジした「エリザベート」の演技で大賞を手にした。あいさつで「これから迷うことなく、演じる道を頑張っていかなければと実感しております」と覚悟を示した。

 演劇賞のソニン(33)はアイドルユニットで華々しくデビューしたが、ユニットを組んだ相手の不祥事で解散。その後、ソロ活動の一方、04年に初舞台を踏み、舞台にも力を入れた。12年に芸能活動を休止し、1年間ニューヨークに留学し、演劇を学んだ。あいさつで「いつかはたくさんの人に認めていただけるほどの力をつけて、賞を頂けるようになればと夢を見てきました。こんなに早く実現するとは思わず、本当に胸がいっぱいです」と泣いた。

 駒田一(52)は16歳で演劇の世界に飛び込み、初の受賞だった。今は亡き作曲家いずみたくのもとで演劇修行に励み、20代の時は俳優としての仕事もなく、演出部でアルバイトもしていた。「受賞の知らせを受けた時は『ウオー』と叫びながら、スーッと涙が出ました」と振り返った。

 梅沢昌代(62)は文学座を経て、井上ひさし作品で活躍した。「私を丈夫に産んでくれた94歳になる母も受賞を喜んでくれました。ますます長生きしてくれると思います」と感謝した。

 受賞は演じる者をさらに飛躍させるだろう。今後の活躍が楽しみになった。【林尚之】