月組の人気スター、美弥(みや)るりかが、ミュージカル「瑠璃色の刻(とき)」で大阪に加え、東京公演に単独初主演する。謎多き「サン・ジェルマン伯爵」を装う青年にふんし、月組を率いてセンターに立つ。公演は大阪市のシアター・ドラマシティで29日~5月7日、東京・TBS赤坂ACTシアターで5月13~21日。

 月組を初めて単身で背負う。「応援してくださった方々にいい報告ができる。下級生も『よかったですね』と声をかけてくれた」と喜んだ。昨秋、月組は9年目のスピードで珠城(たまき)りょうが新トップに就き、美弥は下級生トップを支える立場にある。

 「若いトップをみんなで支えようと、向上心を持って、全員がひとつの方向に。今、すごくいい組の状態」

 月組は珠城が出演する博多座組と、美弥主演舞台の2班に分かれる。美弥が演じるのは、18世紀のフランスが舞台。謎多き「サン・ジェルマン伯爵」と偽って生きる旅一座の青年・シモンだ。シモンは次第に、本当の自分と偽りの自分の境目が分からなくなる。

 「サン・ジェルマンに成り済ますシモンと、サン・ジェルマンになりきった演技。ある意味オーバーに切り替えたい。シモンは、サン・ジェルマンとして認められることが快感になり、サン・ジェルマン以上にサン・ジェルマンになってしまう。私も本名があって、でも、宝塚では美弥るりかとして存在している。そこが似ていると思う」

 ファンに愛される「スター美弥るりか」であろうとする自身の経験が生きる。

 「ファンの皆さんは、役柄などで美弥るりかのイメージを作られていて、皆さんが思う美弥るりかでいなくちゃと。皆さんは私のこういう面が好き、こういう面が見たいんだな、と」

 学年を重ね、本名でいる時間はほぼなくなった。

 「今は、9・8対0・2ぐらい(笑い)。大勢のファンの方が(劇場外に)会いにきてくださる。私にそんな価値はない、と恐ろしくなることも。私のために1時間使わせたのなら、1時間以上に感じる時間をお返ししなければって」

 普段の自分は人見知り。割と無口。会話はゆっくり、積極的に笑いをとりにいくタイプでもないという。

 「でも、皆さんの前では、あえてボケたり、つっこんだり。精神的なポジションを1段上げ、美弥るりかを少し超えるときも。でも当たり前のことで、苦でもない。そこも役と近い」

 前作「グランドホテル」では、あこがれの涼風真世が初演した老人役に臨み、役者として新発見をした。

 「男らしく、格好良くとか、一切必要なくて、心の柔軟性だけ。人を愛する気持ち、憎む心は男も女も関係ない。男役だからと考えすぎず、人として役に向き合うべきだと気づいた」

 役へ取り組む姿勢にも変化が生まれた。ただ、老人役ゆえ「無意識に腰が曲がるようになっていた」と言い「けいこの初期には、二枚目風の動きが分からず、歩き方もぎこちなかったですね」と笑わせた。

 「今回は今までと違う妖しさが必要で、新ジャンル。可能性を次々、引き出してもらい、ありがたい」

 芝居の柔軟性を高め、信頼を厚くしたいという。自分を磨き、また1段、階段を上がる。【村上久美子】

 ◆ミュージカル「瑠璃色の刻(とき)」(作・演出=原田諒氏) ヨーロッパ史に多くの謎を残したサン・ジェルマン伯爵。不老不死の超人か、希代の魔術師か、時空を超えて生きる錬金術師か、比類なき予言者なのか-。旅一座の青年シモン(美弥)は、ひょんなことから、その伯爵になりすまし、宮廷へ乗り込んでいく。18世紀のフランスを舞台に「サン・ジェルマン伯爵」として生き、革命の渦に巻き込まれていく数奇な生きざまを描く。

 ◆美弥(みや)るりか 9月12日、茨城県古河市生まれ。桜丘女高を経て03年入団。星組。10年「ハプスブルクの宝剣」で新人公演初主演。12年4月、月組異動。14年夏、シアター・ドラマシティほか公演「THE KINGDOM」で凪七瑠海とダブル主演。今年1月の「グランドホテル」では、あこがれの涼風真世が演じたオットー役を好演。身長168センチ。愛称「るりか」「みやちゃん」。