喉頭がんで療養中の音楽プロデューサーつんく♂(46)が4日、声を失ったことを明かした。プロデューサーを務める近大(大阪・東大阪市)の入学式に出席し、声帯を摘出する手術を受けたことを発表した。

 つんく♂の声帯摘出発表は、教え子のハロー!プロジェクトメンバーにも衝撃を与えた。詳しい病状については、シャ乱Qメンバーや限られたスタッフしか伝えられていなかったとみられ、発表を聞いたメンバーたちは絶句したという。

 モーニング娘。’15、Juice=Juiceら、ハロプロメンバーたちはこの日、何も知らず、各所でライブやイベントに出演していた。関係者によると、ソロ仕事のあったメンバーもおり、それぞれが違うタイミングで恩師、つんく♂の発表を知った。スタッフからつんく♂の話を切り出され、「えっ…!」と驚き、絶句。その上で詳しい説明を聞き、うなずき、涙ぐむメンバーもいたという。

 ハロプロには10代前半のメンバーも多く、つんく♂は直接、彼女たちに病状を話すことはしなかった。声帯摘出後は、常にパソコンなどを持ち歩き、必要に応じて「筆談」で話していた。3月3日に東京・日本武道館で行われたBerryz工房の解散コンサートでは、パソコンに文字を打つことによってスタッフに指示を出し、最後の舞台に臨んだメンバーたちにもメッセージを送っていたという。

 発表からしばらく、ハロプロメンバーはブログなどでつんく♂の発表に触れることはなかった。関係者は「アイドルとはいえ子どもたちですし、今は驚きの方が大きくて、なかなかすぐには受け入れにくい状態だと思います」と話す。ただ、つんく♂のブログには、「つんくさんの数々の名曲は耳が覚えています!」「大変だったと思いますが、元気になってくれた事に感謝します。つんくさんこれからも頑張ってください!!」など、600件以上の激励コメントが集まった。

 ◆病で声を失った有名人 「人生いろいろ」「珍島(ちんど)物語」などで知られ、05年に中咽頭がんで亡くなった中山大三郎さん(享年64)は、00年に声帯を全摘して声を失った。元横綱の輪島大士さんは、13年12月に下咽頭がんで、声帯を切除。韓国のテノール歌手ベー・チェチョルは、05年に甲状腺がんの摘出手術を受けた際、声帯と横隔膜の両神経を切断して歌声を失った。しかし、06年に甲状軟骨形成手術を受け、動く左側の声帯が静止する右側の声帯に触れて音が発生される形で、歌声を取り戻した。喉頭がんでは、09年没の忌野清志郎さん、11年没の立川談志さんが声帯の全摘を最後まで拒否した。

<つんく♂病状経過>

◆14年

 ▼1月3日 ハロー!プロジェクトの新年ライブ開演前、ガラガラ声で取材に応じた。「筋肉の中に脂肪というか、異物ができてしまったようです。2月か3月に手術をするかもしれない」と説明した。

 ▼3月6日 早期の喉頭がんを患っていることを発表。06年ごろから声帯左側に違和感があったこと、今年2月には手術と細胞検査を受け、喉頭声帯にがんがあると判明した経緯も明かした。しばらくは治療に専念し、タレント活動は休止するとした。

 ▼4月5日 近大の入学式に生中継で出演。言葉は発しなかったが、文書で祝辞を贈った。

 ▼7月16日 東京・日本武道館で行われたスマイレージ(現アンジュルム)の単独公演を訪れた。リハーサルから駆けつけ、かすれ声で指示も出した。がん公表後、初めての公の場だったが、取材には応じなかった。

 ▼9月25日 喉頭がんが、完治に向けての大きな段階である「完全寛解」したことを発表した。

 ▼10月5日 家族とともに、モーニング娘。のニューヨーク公演を訪れた。

 ▼10月17日 喉頭がんが再発見され、同月上旬に手術を受けたと発表。手術は無事成功し、回復を目指して入院中とした。

◆15年

 ▼3月3日 東京・日本武道館で行われたBerryz工房の解散コンサートを訪れた。開演前、舞台裏でメンバーたちにメッセージをつづった手紙を渡し、スタッフに代読させた。