世界的人気作家、村上春樹さんが昨年発表したベストセラー長編「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」の英訳版が12日、全米で一斉に発売された。取り扱う書店には11日夜から熱狂的なファンらが集まった。

 ニューヨーク・マンハッタンにある書店では11日夜、それほど広くない店内が約70人のファンで埋まり、発売が解禁された米東部時間の12日午前0時(日本時間同日午後1時)には列をつくって買い求めた。

 写真撮影業のジョン・ロジャースさん(35)は2年前に知人から村上さんの作品を教えられファンになった。一番好きな本は「ダンス・ダンス・ダンス」。村上作品の魅力を聞くと「自分もジャズが好きで、本を理解しやすい」と語った。

 ノーベル文学賞候補として毎年取り沙汰される村上さんの作品は、米国でも人気が高い。新作を待ち望むファンの姿を、ニューヨーク・タイムズ紙は「かつての世代がビートルズやボブ・ディランの新作を買うためレコード店に詰め掛けたようだ」と評した。

 英訳版は日本語版とほぼ同じ386ページで、定価は25・95ドル(約2600円)。「1Q84」の共訳もしたアリゾナ大のフィリップ・ガブリエル教授が翻訳した。