建て替えのため4月30日で閉場する東京・歌舞伎座「御名残四月大歌舞伎」が28日、千秋楽を迎えた。51年の再開場以来、59年の歴史の最後を飾る公演とあって開場前から「当日券」「一幕見」のチケットを求めて長蛇の列ができ、最後の演目「助六由縁江戸桜」で幕が下りた後も満員の観客からの拍手が鳴りやまなかった。

 午後7時50分、歌舞伎座公演の最後の演目「助六由縁江戸桜」が始まった。市川団十郎の助六、坂東玉三郎の揚巻に、尾上菊五郎、片岡仁左衛門、中村勘三郎らも出演。通人役の勘三郎が「思い出が詰まっているから、寂しくなっちゃうね。また新しい歌舞伎座で、夢見せてもらいましょうよ。しばしの間、歌舞伎座からさようなら~」と涙声で呼び掛けると、客席から大きな拍手が起こった。

 午後9時50分、助六の団十郎が花道から引っ込んで幕が下りると、満員の観客の拍手が鳴りやまない。「長らくのご愛顧ありがとうございました」の場内アナウンスが流れる中、拍手は5分間も続き、大向こうから「ありがとう、木挽町(こびきちょう=旧町名で歌舞伎座のこと)」と歌舞伎座への感謝の掛け声も飛んだ。終演後も客席に残って記念撮影したり、正面玄関前で歌舞伎座をバックに写真を撮る姿が深夜まで続いた。

 この日朝から「御礼本日千秋楽」の大きな垂れ幕が正面に掲げられた歌舞伎座には多くの観客が詰め掛けた。強い雨の中、数十枚の「当日券」や150席の「一幕見」のチケットを求めて長い列となり、身動きできないほどの混雑ぶり。「どうしても千秋楽の舞台を見たかった」という徹夜組を含め5、6時間待ちの状態で、この日のチケットは金券ショップやネットオークションで10倍近い5万円、10万円の値がついた。

 最後の支配人となった山本徹氏は「今月は2日の初日からこういう状態。一幕見も毎回満員で、こんなことは歌舞伎座59年の歴史の中でも初めて」と驚くほど。3月と4月は「最後の歌舞伎座の舞台を多くの人に見てもらいたい」と従来の2部制から3部制にしたこともあって、4月は過去最高の16万人以上を動員した。29日に修祓(しゅうばつ)式、30日に閉場式を行い、59年の歴史に幕を閉じる。新しい歌舞伎座は13年春に開場する。

 [2010年4月29日10時49分

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