昭和の歌姫、美空ひばりさん(享年52)の生活空間に触れることができる。没後25年、ひばり御殿と言われた東京都目黒区青葉台の自宅が5月28日から一般公開されることが27日、分かった。長男の加藤和也さん(42)が明らかにした。ファン待望の「聖地」公開だ。

 174坪(574・2平方メートル)、鉄筋3階建ての邸宅は「記念館」として生まれ変わる準備に追われ、ひばりさんゆかりの品々であふれかえっている。

 ファンから「聖地」としてあがめられてきた邸宅は、住み込みで身の回りの世話をしていた辻村あさ子さん(63)ら平均年齢71歳の3人の女性によって守られてきた。辻村さんは「23歳でここに来てから41年になります。ファンの方が来られるようになったら、ひばりさんが好きだったところてんやあんみつでおもてなししたい」という。

 和也さんは「母も友人の方々も(辻村さんの作った)スペアリブが大好きでした。そんな母が好きだったものや母が暮らした空気を味わっていただきたい」。ひばりさんの晩年には、ビートたけしやとんねるずも辻村さんの料理で宴会を楽しんだ場でもある。

 和也さんは現在、都内の別の場所で暮らしている。「ここに来るたびにファンの方がいらしている。『北海道からひばりさんのお宅を見に来ました』などと言われて頭の下がる思いでした。母は寂しがり屋で、親しい人を招くのを楽しみにしていましたから」と公開の思いを明かす。

 京都・嵐山の「美空ひばり座」が19年の幕を閉じたこともあり、熱心なファンの思いを受け止める場所がなくなっていた。

 自宅は73年に作られ、亡くなる数年前に現在の形に建て替えられた。公開されるのは3分の1、55平方メートルのスペースで、玄関からリビング、茶の間、ひばりさんの位牌(いはい)のある仏間となる。

 「皆さん遠慮しておっしゃらないのですが、正直、これが『ひばりの家』と思われると思います。ふすまは無地の白だし、リビングもそれほど広くない。いただいたものはしっかり飾るので統一性もない。東京公演中は(辻村さんの作る)三色弁当持参の毎日でしたし」。和也さんは庶民派の一面に接してほしいという。

 不世出のスターが素顔の「加藤和枝」に帰る場所。ファンにとっては夢に見た空間が実感できることになる。【相原斎】<スターの記念館>

 ▼石原裕次郎記念館

 幼少期を過ごした北海道小樽市に91年6月開館。映画「黒部の太陽」のセット再現や裕次郎さんゆかりの品々が購入できるショップまで多彩に展開。

 ▼北島三郎記念館

 高校まで過ごした北海道函館市に02年12月開館。生い立ちからデビュー、現在までの足跡などを紹介。

 ▼村田英雄記念館

 村田さんの故郷、佐賀県唐津市相知町に04年5月開館。舞台の控室を再現し、愛用品や写真を展示。

 ▼森光子一座記念館

 森さんが石川県加賀市山中温泉の舞台小屋「山中座」の名誉館長だった縁で同地に13年4月開館。舞台「放浪記」の衣装や国民栄誉賞の盾などを展示。名誉館長は森さんと親交の深かった森喜朗元総理。