俳優浅野忠信(40)が、第36回モスクワ映画祭の主演男優賞に輝いた。28日、各賞の授賞式がモスクワ市内で開催され、発表された。主演映画「私の男」(熊切和嘉監督)の演技が評価され、1983年(昭58)、故加藤嘉さん以来31年ぶり日本人2人目の快挙となった。「私の男」も最優秀作品賞に輝き、2冠を達成した。日本作品の同賞は、故新藤兼人監督の99年「生きたい」以来15年ぶり。

 浅野が、「運命の役」で快挙を成し遂げた。式には参加せず、日本で受けた吉報。「とてもうれしい。作品に対しての意気込みや思い入れは誰にも負けないものでした。まさかこんな形で報われるとは思っていなかったので」と喜んだ。

 遠縁の女児を引き取り、家族の絆を感じ合う中、禁断の関係へと進む役どころを台本で読み、「すぐにでもいける。どうやって自分のものにするか」と直感した。役作りに全身全霊を注ぎ、「キーになる」と思った二階堂ふみ(19)とのぬれ場シーンは、氷点下10度の北海道・紋別のセット内で、裸で水を浴びながら行ったという。「2人のリズムが想像以上に良かった。台本にない2人の世界ができました」。

 ロシア映画祭は、カンヌ、ベネチア、ベルリンの世界3大映画祭に次ぐ権威を持つ国際映画祭。主要国際映画祭での日本人の主演男優賞受賞は、「誰も知らない」で04年のカンヌ映画祭男優賞を受賞した柳楽優弥(24)以来10年ぶりとなった。最優秀作品賞を手にした熊切監督も「最高です」と喜びを口にした。【村上幸将】

 ◆「私の男」

 腐野(くさりの)淳悟(浅野)は、10歳で震災孤児となった遠縁の花(二階堂)を引き取った。家族の愛を知らない淳悟と家族を失った花は、北海道・紋別の田舎町で寄り添うように暮らす中、禁断の愛と性で結ばれる。2人が親子になった6年後、2人を知る老人・大塩(藤竜也)が殺され、2人は紋別を後にする。原作は、桜庭一樹氏の第138回直木賞受賞作。

 ◆モスクワ国際映画祭

 59年の第1回で「千羽鶴」(吉村公三郎監督)がソ連平和擁護委員会賞、「いつか来た道」(島耕二監督)が審査委員賞を受賞。新藤兼人監督は、61年「裸の島」、71年「裸の十九才」、99年「生きたい」で最優秀作品賞、04年「ふくろう」で特別功労賞。「ふくろう」では大竹しのぶも最優秀女優賞。黒沢明監督は、75年にソ連映画「デルス・ウザーラ」で最優秀作品賞、宮沢りえが01年に中国映画「華の愛

 遊園驚夢」で最優秀女優賞を受賞。昨年は、「さよなら渓谷」が審査員特別賞。