ボクシングの名門ヨネクラジム(東京・豊島区目白)が、8月で幕を閉じる。ジムが27日に発表した。米倉健司会長(82)が体調を崩して3月に入院。選手指導やジム経営が難しくなり、一代限りでの閉鎖を決断した。1963年(昭38)の開設から、柴田国明を皮切りに著名な世界王者を5人育て、伝統と歴史を感じさせる独特の練習やジムで一時代を築いた。8月に所属選手の最後の試合をもって、54年間の歴史に幕を下ろす。

 ガッツ石松氏は所属していたジム閉鎖の一報に「会長の体調がすぐれず、息子さんも医者でジムを継ぐつもりはないと聞いていた。米倉会長は私の現役時代から“オレ一代で終わり”と話していた。有言実行でスパッとやめるのは、潔くて会長らしい。これも時代の流れかな」と静かな口調で話した。

 同ジムが半世紀以上にわたり世界王者らトップ選手を輩出し続けた理由について「会長のマッチメークがうまかった」と石松氏。自身は世界王座を奪取した時点で11敗していた。「負けても、これでもかとチャンスをつくってくれたから開花した。ヨネクラジムに入ったからこそ世界王者になれた」と振り返った。

 14年の大橋ジムのパーティー以来、会っていないという。「世界挑戦もした元選手だから、選手の気持ちが分かる。“何でも好きな物を食べろ”とお金に糸目を付けなかった。私も意気に感じてね。これからは体を大事にして、のんびりと過ごしてほしい」と、走り続けた82歳の恩師の労をねぎらった。【首藤正徳】