西前頭5枚目の遠藤(24=追手風)が左膝を負傷し、6日目からの休場が決まった。東前頭8枚目の松鳳山(31)を突き落として4勝目を挙げたが、その際に左膝が巻き込まれた。大阪・堺市内の病院で「左膝半月板と前十字靱帯(じんたい)損傷で全治約2カ月」と診断された。

 歓声がどよめきに変わり、やがて静まりかえった。左膝に手を置き、立ち上がろうとするが、できない。顔をしかめたまま、遠藤は土俵に両手をついて体を起こせなかった。「遠藤!」「頑張れ~」。声援が飛ぶも、土俵に上がれない。行司の勝ち名乗りを受けることもできなかった。周囲が肩を貸し、足を引きずりながらようやく花道を引き揚げた。軍配が上がってから、2分が過ぎていた。

 激しい攻防だった。松鳳山との突っ張り合い。いなされてもこらえ、立て直した。両まわしを取られると、瞬時に体を右に開いて突き落とした。相手の体が落ちる。そのとき、自分の左脚が相手の体の下にあった。足首に乗られ、左膝をひねりながら後ろに倒れた。思わぬ事態が待っていた。

 13年秋場所で左足首を痛めて、初めて休場を経験した。その際は、公に痛がる姿はなかった。今回は車いすに乗らなければ動けなかった。支度部屋では痛がるそぶりは少しも見せず「何ともありません」とだけ話していた。しかし、駆け込んだ医務室では「曲げると痛い」と話した。着物の帯を締める際、自分では動けずに、付け人が回った。

 大阪市内の病院ではMRI(磁気共鳴画像装置)検査を受けられず、堺市内の病院まで回って半月板と前十字靱帯の損傷が見つかった。全治約2カ月と診断され、さらに詳しい検査を行うためにそのまま入院した。手術を受けるかどうかは未定。2、3日安静にするといい、夏場所の出場も危ぶまれる大けがだった。

 角界でも1、2を誇る人気力士の大けが。1場所全休しても翌場所で同じ番付にとどまることができた公傷制度は、04年初場所に廃止されている。夏場所も全休した場合、十両に陥落する可能性が出てきた。

 日大3年時、右膝前十字靱帯を断裂して復帰に8カ月も要した苦い経験がある。師匠の追手風親方(元前頭大翔山)は「やってしまったことは仕方ない。けがはつきものだから。前向きに早く治して一生懸命頑張るしかない」と話した。入門からちょうど2年。新三役へ、2日目から連勝して波に乗っていたホープに突然、悲劇が襲いかかった。【今村健人】