資金難に苦しむアスリートが熱い自己PRで賞金を獲得する「ワールド・チャレンジャーズ」の最終公開オーディションが26日、都内で行われ、トランポリンの伊藤正樹(22=金沢学院大ク)が優勝賞金300万円をつかんだ。ほかに準優勝200万円を手にした近代5種の黒須成美(フリー)ら6人が賞金を獲得。レジャー産業大手マルハンが総額1000万円を支給する企画。マイナー競技のつらさを味わう選手が、日の目を見るきっかけとなるか。

 競技への情熱と、資金繰りの苦しさ。最終審査に残った14競技15人が、ありったけの思いを打ち明けた。熱いスピーチで、貴乃花親方ら審査員に訴えた。もっとも胸に響く言葉を届けたのは、今年のトランポリンW杯日本大会優勝者で大学院生の伊藤だった。「ほかの14人と熱い気持ちで戦い、その中で勝てた。自分にも、トランポリン界のためにも良かった」と喜んだ。

 自分のためだけではなかった。訴えたのは「夢」だった。「僕の夢は五輪で勝って、トランポリンをメジャーにすること。日本人でメダルを取った選手はいない。僕が取る。そして、少しでも『トランポリン』というワードを広げたい」。貴乃花親方は「団体を背負っていらっしゃるところに共感した」と感激した。

 世界と渡り合う全日本3連覇のエースは、11月の世界選手権(英国)でロンドン五輪出場枠と、メダル獲得による代表内定を狙う。ただ、今季の遠征費は全額支給だった昨季と違い、半額に減った。100万円を超す金額が自己負担。収入はなく貯金を切り崩してきた。「今回も半分自費で代表権を取ってきます。一緒に戦った皆さんの分まで熱い気持ちを持って行きたい」。情熱でつかんだ資金。少しでも何かが変わればと願っていた。【今村健人】